46話
メガネを外したロベルトの目には、キラキラと輝く細い光の筋が見えていた。これが魔力である。
魔力は基本的に魔法使いかモンスターしか持っていないため、ルヴォルスのような精神的負荷はほとんどない。特に魔法使いの場合は魔法を行使している時にのみ魔力が現れるから、冒険者にでもならなければ頻繁に見ることはないだろう。
魔力が見える者は少ないが、全くいないわけでもない。魔力量が一定以上高ければ見ることができる。ロベルトは力を失ってもなお余りある魔力があるため見えるのだ。
煙のようにたなびくそれはレッドウルフから立ち上っている。名前にレッドとあるからか、魔力の色が赤を帯びていた。ちなみに通常の魔力色は紫だ。
「魔力はある、が……それを使うことはできなさそうだな。魔法攻撃はない! これなら行けるぞ」
モンスターの中には魔法攻撃が使える者もいる。高位になればなるほど、その威力ともども増していくのだ。幸いなことに、このレッドウルフは使えないようだ。
すぐ横で風切り音が何度も鳴る。リリンが弓を射っているのだ。スピードを奪われたレッドウルフはそれを完全には捌ききれず、いくつかの矢が体に刺さる。その隙を突いてルヴォルスが剣を振るった。
風の精霊を奪われ、矢に射られ、その動きは鈍い。最初に比べれば雲泥の差だ。それでも、レッドウルフは咆哮して向かってくる。その執念はさすが狼といったところか。
その姿を見たロベルトは、ほんの少し口角を上げる。
「魔法を使う。少し離れてくれ」
「……大丈夫なの?」
「撃つのは一発だけだ」
心配そうなリリンに力強く返すと、ロベルトは詠唱に入った。
「大地を唸らす風よ、汝こそ我が隷属者なり。我に供し、我が敵を撃て。ウィンド・インパクト!」
轟、と風がロベルトの頭上に集まってくる。それは不可視の巨大な岩となり、鉄槌のごとくレッドウルフを打ち付けた。クレーターができるほどの威力を伴う風をまともに受け、敵はぐったりと倒れる。
「まだ息はある。トドメを刺してやってくれ」
「お疲れ、ロベルト」
ルヴォルスが倒れたレッドウルフの心臓を貫いた。それきり、レッドウルフは動かなくなる。
ロベルト達の勝利だ。
極度の緊張が解かれた三人は、ぐったりと座り込み互いの健闘を称え合う。
こうして、Bランクモンスターとの戦いは幕を閉じたのであった。
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