45話
剣が風を斬る。その音を聞いてレッドウルフはすぐに方向を転換した。さすがは高ランクモンスター、大上段から真っ二つとはいかない。
ルヴォルスを迂回して後衛二人の方に向かおうとするレッドウルフの動きを、精霊だけを頼りに追う。地面に突き刺さりそうなほど勢いよく降ろした剣を、腰を使って強引に引っ張り上げた。そのまま、レッドウルフ目がけて半回転し剣を横薙ぎに振るう。
(レッドウルフから離れて、風の精霊。きみを斬るわけにはいかない)
ブンッと重い音をさせながら空気を切り裂く。腕力任せのこんな太刀筋など、レッドウルフでなくても躱せるだろう。……いつもなら。
ルヴォルスの一撃は、大当たりとはいかないまでも、レッドウルフに傷を負わせた。精霊干渉で風の精霊を奪ったのだ。これでルヴォルスは風の精霊の力を借りられる。速さだけなら、どうにかこうにかレッドウルフについていけるはずだ。
「リリン、繋げ!!」
ロベルトが声を張る。ルヴォルスの目に、沼地から水の精霊が飛び出していくのが見えた。リリンが祈り始めた証拠だ。
リリンの滑らかな薄水色の髪がふわりと舞い上がる。いつ見ても綺麗な光景だ。が、今はそれに目を奪われている時間はない。
風の精霊の力を借りて、ルヴォルスはレッドウルフを全速力で追いかける。
(体が軽い……さすが、風を司る精霊だな)
精霊を味方につけるとこんなにも変わるものなのかと、ルヴォルスは驚きを感じた。モンスターがこぞって精霊を纏うわけである。
その時、ルヴォルスの視界の端で水色が次々に弾けた。風と水、二つの精霊がくるくると踊っている。どうやらリリンが祈りを成功させてくれたらしい。
リリンは水の精霊に好かれている。髪が水色なのがいい証拠だ。
人間は少なからず精霊に愛されているために、髪の色が好かれている精霊のイメージカラー(属性)に染まるのだ。だから父母と髪の色が違うなんてザラなことである。
普通の人間はもっとまだらだったりくすんでいたり、特に好かれていなかったりするので、リリンほど綺麗に染まっている人はかなり珍しい。
「ありがとう、ルヴォルス。これで討伐しやすくなった。さあ、一気に攻めるぞ!」
「了解。リリン、弓矢行ける?」
「行けるよ! ロベルトは一応メガネ外してね!」
レッドウルフが警戒したように立ち止まる。三人は不敵に笑って、各々の武器を構え直した。ロベルトがメガネを外す。
レッドウルフは大きく吠えて、三人に飛びかかった。
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