17話

 無事に街へ着いた三人は、警備兵に聞いてまず初めに街の冒険者ギルドに向かった。

「大通りを真っ直ぐ行って右……ああ、ここか」

 ロベルト達の前には、周囲の建物に比べて倍以上の大きさを誇る巨大な建造物がそびえ立っていた。言わずもがな、これがギルドである。

 三人は一頻りそれを眺めたあと、ギルドへ入って行った。

 ギルドの内部は騒々しかった。すでに夕暮れ時であり、多くの冒険者が街に帰ってきているからだろう。受付カウンターの前には人だかりがあり、とてもじゃないが近寄れそうにない。反対に、依頼者の掲示板の前は空いていた。この時間から依頼へ向かう者は少ないのだ。

 併設されている狭い食堂も人で溢れかえっていたため、仕方なく壁の方へ寄る。と、そんな三人に目をつけた者が一人……

「おう、お前ら見ない顔だな。新人か?」

 身長二メートルを超える大男だ。女のリリンと、身長が同年代の少年達より少し低いロベルトには熊のように見える。

「はい。エレパスから来ました」

「そうかそうか。ところで随分なべっぴんさんを連れてるが……どっちのだい?」

「あはは。どっちのでもありませんよ。ただ、そうですね。貴族の何某さんかに求婚されているので、手は出さない方がいいかと」

「そりゃまた驚いた。ああ、俺はデニスってんだ。ここの古株さ。よろしくな」

「はい、よろしくお願いします」

 話術に長けたルヴォルスがにこにこと会話を進める。強面の男と平然と笑顔で話せる辺り、ルヴォルスも肝が座っている。もっとも、人間に怯えていてはモンスターなど相手にできるはずもないのだが。

「じゃあ僕達、受付行ってきますね」

 カウンターが空いたのを見計らって、ルヴォルスは会話を切り上げた。

 デニスは顔は怖いが性格は善人的であり、いざこざを起こすタイプではなかった。美人を連れていると多少なりとも女目当てが寄ってくるので、最初に声をかけられた相手にしては悪くなかっただろう。

 三人は空いたカウンターに早足で近づいていく。この込み具合だ、早いうちに行かないと、他の人に取られてしまう。

「すみません、パーティ登録したいんですけど」

 カウンターに着くなり、ロベルトは早口に言った。

 ロベルト達の故郷エレパスではギルドが小さすぎてパーティ登録の手続きが取れなかったのだ。

 冒険者登録はどんなに小さいギルドでもすぐにできるのだが、パーティはそうもいかないらしい。

 カウンターの内側にいた受付嬢は書類を整理していた手を止め、にっこりと笑みを浮かべた。

「はい、パーティ登録ですね」

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