18話

「ではカードの提示をお願いできますか?」

 カード、というのは冒険者カードのことだ。冒険者には身分証明として一人一人に渡されている。もちろん三人も自分達の街ですでに登録を済ませている。

 ちなみに失くしたら再発行は基本的にできない仕組みだ。

「三人ともエレパス出身……あら? あの、これ、間違ってないかしら?」

 受付嬢がそれぞれのカードをスキャン用の水晶にかざす。と、そのうちの一枚を見て、首をかしげた。ロベルトの冒険者カードだ。

「え、どこですか?」

「ここの欄、得意魔法のところなんですけど……」

「間違ってないですよ。俺の得意魔法は操天魔法です」

「そ、そうなんですか? それはあの、失礼しました……」

「よくあることなんで、大丈夫ですよ」

 正直、やっぱりなという感じだった。昔はエレパスでも何度も同じことを言われたものだ。

 何も知らない人なら当然驚くだろう。他の上級魔法ならいざ知らず、操天魔法など上級の大魔法だ。それが得意など、普通では考えられない。しかもまだ子どもであるというのに。

 周囲の冒険者達も、ロベルトの得意魔法が操天魔法だと聞いて驚きの表情を浮かべている。中には胡散臭そうに顔をしかめている人もいた。こちらは特にロベルトと同じ魔法使いが多い。

 そんな視線にさらされながら、ロベルト達はパーティ登録の手続きを進めた。

「では確認します。パーティ名は『空の夜明け』、パーティリーダーはロベルトさん、メンバーはルヴォルスさんとリリンさん、でよろしかったでしょうか?」

「はい。ありがとうございました」

 ぺこりと頭を下げ、三人はカウンターから離れる。すると、待ってましたとばかりにデニスが近寄ってきた。

「おい、お前ら……」

「何でしょうか?」

「……いや、何でもない。まああれだ、気をつけな」

 にっこりと、笑顔で圧力をかけるルヴォルスにデニスは何も言えなくなる。ロベルトの事情は、三人の中ではトップシークレットの扱いなのだ。下手に知られては困る。

 古株のデニスが何も言わなかったので、他に絡んでくる者もおらず、三人は何事もなく外へ出て行った。あとに残った冒険者や受付嬢達は、そんな彼らを驚きの目をもって見送った。

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