13話
ロベルトと交代で見張りに立ったリリンは、焚き火の前に座ってぼんやりと考え事をしていた。
(まさかいきなり盗賊に出会うなんて、ついてなかったわね。あとロベルトにはもっと自分を大切にしてほしいわ。盗賊は死んでなかったから手加減はしたみたいだけど)
まさか力を失って前より弱いのに大魔法を連発するとは思わなかった。弱い、といっても一般的な基準で見ればそれでも相当強いが。
ロベルトは操天魔法しか使わない。使えないのか使わないのかは分からないが、ある時を境にリリンはロベルトが操天魔法以外を使ったところを見なくなっま。自分が近すぎるから言えないのだろうか。
(ルヴォルスなら、何か聞いてるかしら? でもルヴォルスは自分のことで手一杯よね。弟が誘拐されたまま行方知れずで、自分も酷い呪いをかけられてる。これじゃ他人の問題まで背負い切れるはずがないか……)
私だって、自分の問題で精一杯なのに。そっと、座ったまま両足を抱きかかえた。
リリンは三十も年の離れた貴族に求婚されている。三年前、見目を気に入られたのだ。
普通は平民を妻に、など考えるはずはないのだが、リリンはあまりに美しすぎた。十歳になる前から縁談が舞い込んでくるくらいなのだ。貴族から求婚されても何らおかしくはない。
だがリリンはそれを受け入れられなかった。他に好きな人がいたから……ではない。ロベルトが心配だったからである。その貴族に求婚されたのは、ロベルトが力を失った直後だったのだ。
今まで当たり前にできていたことができなくなり、力が弱まってしまったロベルトはひどく落ち込んでいた。魔法の威力も発動回数も激減してしまったのだから当然だろう。
気高く強かったロベルトが暗い目をして寝込んでいるのを、もう見ていたくなかった。元気にしてあげたかった。せめて、前のように淡い微笑みを浮かべてほしかった。
求婚の件は、今も保留になっている。それに返事も告げず出てきてしまったのだから、夜逃げしたようなものだ。でも、それでいいと思った。
(私には、貴族のお嫁さんよりただの冒険者の方が向いてるわ。よっぽど、ね)
二人と一緒に旅ができるなら。ロベルトが笑ってくれて、ルヴォルスが楽しそうならば、それ以外は何もいらない。
(どうか、二人が幸せになれますように)
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