11話

 木の皿にスープをよそった三人は、火を囲んでのんびりと会話していた。夜になるとモンスターは凶暴化してしまうが、街道からさほど離れた場所ではないのであまり心配はいらないだろう。

「ご馳走様でした。初日にしては悪くない食事だったな。もっと旅慣れれば焼き固めたパンとか食べるようになるんだろうけど」

「そうよねぇ。贅沢できるのも今のうちって感じ。隣街に着いたらまず依頼の確保が最優先よね」

「うん、アロンダさん達も言ってたし。あ、見張りはどうしようか? 一応立てておいた方がいいと思うけど」

「俺、リリン、ルヴォルスの順でどうだ?」

「うん、いいよ。ルヴォルスは?」

「僕もそれで構わない。じゃ、最初の見張りはよろしくね」

「ああ」

 これといってやることもないので、他の二人は早々にテントへ入っていく。ちなみにテントは三人一緒だ。女の子一人というと危ない気もするが、そう直接的な感情はロベルトもルヴォルスも抱いていない。リリンもそれを承知しているので一緒なのだ。そして何より、テントを二つ買う余裕がなかった。

 テント内でごそごそという物音が止むと、辺りには焚き火のパチパチという音だけが響いていた。それをぼんやりと眺めるロベルトの表情は、憂に沈んでいる。

(操天魔法、二発しか使えなかった。全盛期ならあの程度何でもなかったのに。いくら大魔法とはいえ、俺は昔―――だった。なのにそれが、たった二発だけなんて!)

 握り合わせた両の手をぐっと握りしめ、悔しそうに俯く。

 本来、ロベルトの魔力量は桁違い中の桁違いだった。それがとある事件がきっかけで、魔力を奪われてしまったのだ。

 それ以来、なぜか操天魔法しか使うことができない。どんなに簡単な魔法でも、発動することさえできなくなった。

 これから都会に出るにつれ、きっと面倒ごとは多く起きる。そもそも訳ありばかりが集まったパーティなのだ。問題が起きないはずがない。

 リリンを貴族の魔の手から守り、ルヴォルスの弟を探し出し、そして呪いを解かせる。これだけでも並大抵のことではない。

 その上、一番戦闘力のある自分が大魔法二発でこの有様とは情けない限りだ。

(もっと、強くならなきゃな。あいつらは俺が守るんだ。早く魔力を取り戻さないと……)

 炎の弾ける音を遠くに聞き流しながら、ロベルトは密かに決意を固めた。

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