10話
夕日もほとんど暮れかけた時刻に、三人は野宿の準備を始めた。元々二日ほどかかる道のりなのでこれといって不満はない。商人達から物資も十分買えたし、そこそこ快適な夜を過ごせるだろう。
「夕飯はどうしよっか? 材料自体は荷物の中のもので足りると思うけど」
「ルヴォルスが作ればいい。俺が焚き火用の木切れを集めてくる」
「えー……まあいいけどさ。簡単なものしか作れないから、文句言わないでね」
「じゃあ私は水の用意してくる。確か、この近くに川があったはずだわ」
「ドジ踏んで川に落ちるなよ?」
「落ちないわよ!」
荷物の中から人数分の木のカップを持って水音のする方へ行ったリリンを見送り、ロベルトも森方向へ木を集めに向かった。
今日の野宿場所に一人残ったルヴォルスは、荷物の中から食べ物を出して吟味していた。料理係に任命されたが、野外で、しかも満足な調理器具もないところで料理を作るのなんて初めてだ。
何を作れば二人は喜んでくれるだろう。二人とも意外と子ども舌だからシチューのようなものなら受けがいいかもしれない。ただシチューを作るにはちょっと時間がかかりすぎる。時間も少なくて済み、ちゃんと腹にたまるもの……そうだ、スープに肉を入れたらどうだろう。
温かく、さっと食べれて、具沢山。決まりだ。
メニューを決めたルヴォルスは、早速調理を始めた。野菜を一口大に切り、肉を捌いていく手際は見事なものだ。下級とはいえ貴族とは思えない。
そこに、カップを抱えたリリンが戻ってきた。
「あ、夕飯何?」
「具沢山のスープだよ」
「やったぁ!」
「へぇ、具材足りるのか?」
「うわっ、いつからいたの!?」
「さっき。で、材料は?」
「足りるけど……」
「ならいい」
いつの間にか戻ってきていたロベルトが後ろから顔を出して問うてきた。それに驚きつつ返すと、ロベルトはこくりと一つ頷いてその辺の草の上に腰を下ろす。どうやら手伝う気はないらしい。
リリンはその様子を見て手伝うくらいすればいいのにと呟きかけたが、今日は操天魔法を使って消耗していることを思い出したのか、何も言わずにルヴォルスの手伝いを始めた。
それから三十分も経たないうちに、具沢山スープのいい匂いが辺りに漂った。
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