第46話 メリュー島、朝の光景

      メリュー島、朝の光景



 翌朝、俺は起きてすぐに、最近気になっていた事をサヤに提案してみることにした。

 俺の背中で、無防備によだれを垂らしているサヤに振り返る。


「サヤ、おはよう。もう朝だぞ~」

「シンさん、おはよ~っす~。もうちょっとっす~」


 アマンダはもう起きて、シャワーでも浴びているのだろう。俺が起きた時には、既に俺の背中には居なかった。


「サヤ、顔を洗ってからでいい、久しぶりに鍛錬しないか? そろそろ、落ち着いてきたというか目処がつきそうだし。このままじゃデブりそうだ」


 すると、最初は目を擦っていたがサヤだが、その眼を大きく見開く!


「え、あたい、デブったっすか?! そ、それはヤバいっす! シンさんに、『お前、重いから、これからはソヒョンと組む』なんて言われたくないっす! 早速やるっす!」


 ぶはっ!

 これは、意図せず、一瞬でこいつの眠気を飛ばす効果があったようだ。

 彼女はマッハで俺から飛び降りる!


「い、いや、そういう意味じゃないぞ。俺にとっては、お前と松井さん、どっちが乗っても分からないからな」


 まあ、これは事実だ。

 もっとも、あの人が尻尾に掴まっていて気付かない俺も、どうかとは思うが。


「そんな事どうでもいいっす! ってか、松井さんと比べ…、ん? テレポンっす。あ、アマンダさんっすね。……。了解っす! シンさん、先に給水機見て来るっす。シャワーが出なくなったそうっす。ついでに、日本のも足してあげるっす」

「分かった。じゃ、ヘリポートの横で待ってるから」


 サヤは、奥の人間用の扉に駆けて行った。


 給水機への補水は、上部の蓋を開けて、魔法で水を足すだけの簡単な作業なのだが、何気に重要だ。シャワーの時もだが、便所の時にでも切れたらかなり残念だろう。ちなみに俺もできるのだが、加減が苦手なので、そこらが水浸しになるのは間違いない。なので、専らサヤがやってくれている。流石に、アマンダにそんな雑用をさせる訳にはいくまい。


「と、俺もついでに、あれもやっておくか」


 俺専用の巨大シャッターのボタンを押し、シャッターを開ける。

 うん、今日はいい天気のようだ。


「シンさん、おはようございますです」


 外から、大きなゴミ袋を抱えたソヒョンが顔を出し、俺を見上げる。


「ソヒョン、お早う。丁度良かった。うん、ゴミ出しご苦労様。で、手順は分かるか?」

「はいでございますです。生ゴミはそっちの穴で、燃えるゴミは、こっちでございますですね? 資源ゴミは、さっき日本の領事館に運んだでございます」


 ソヒョンが指さした先には、俺の足型がくっきりと残る、深さ1m程の穴が二つ。

 ふむ、既に日本も活用しているようだ。双方、まだ少しだが、シュレッダーされた書類とか、ゴミが放り込まれている。


「流石だな。うん、生ゴミは土にしたいんだよ。多少匂うが、ここは風通しもいいし、それ程気にならないからね」


 そう、このメリュー島には土が皆無だ。これでは、パイソントードどころか、花壇すら作れない。

 ふむ、日本の残土とかも受け入れるか? あ、でも、輸送費用が馬鹿にならんな。

 なら、俺がダンプごと運ぶか?

 うん、それなら可能だな。


「完了でございますです。では、これから朝飯の準備をするでございますです。腹を空かせて待っていやがれです!」


 等と考えている間に、ソヒョンがゴミ出しを終えたようだ。空のビニール袋を抱え、俺に向かって軽く微笑んでから、足元を擦れ違っていく。


「うん、ありがとう。後は俺の仕事だな」


 俺は外に出て、その穴の片方目掛けて息を放つ!


「ファイアブレス!」


 うん、完璧。僅かな消し炭を残して、全て綺麗に燃え尽きた。

 ふむ、ゴミ処理のバイトでも食っていけるか?


 そして、そのまま翼を広げる。

 そう、メリューの哨戒だ。

 やはり、現状、まだ同盟関係でも無い日本に、頼りっきりというのはいけないだろう。

 それに、日本を100%信用している訳でもない。日本にとって、メリューよりも重要な国には配慮する可能性が高い。


 以前、サヤと回った辺りをぐるりと一周し、その後、高度を一気に数千メートルまで上げる!


 うん、特に目立った動きはないようだ。

 メリュー島から数十キロくらいの東側に米軍艦隊、西側に日本。そして、北側にロシアだ。

 ん? ロシアは潜水艦の件があるので、撤退するかと思っていたが、まだ頑張っているようだ。


 何事も無いようなので、俺はサヤとの鍛錬の為に、ヘリポートの脇に向かう。

 あ~、ここは後で拡張だな。見た感じ、大型ヘリだと4機が限度っぽい。昨夜の話だと、6カ国全ての輸送機が集結するはずだ。

 羽田から俺に乗って、後は手ぶらでって奴は居ないだろう。



 俺が着地すると、サヤは既に待っていてくれた。

 いつもの忍者装束だが、今日は少し違うか?

 あ~、いつもは股引きだったのだが、今日はミニスカと。

 ふむ、これじゃ完全にアニメのくノ一だな。モーリスに影響されたか?


「じゃ、いつも通りだ。お互い、身体強化以外の魔法や武術スキルは無しで、俺は飛ばない。サヤが俺の胴体に触れたらサヤの勝ち。で、いいか?」

「はいっす! でも、久しぶりっすね。あたいも、なまっていないか心配っす」

「ああ、それは俺もだ。メリュー崩壊直前は、そんな暇なかったしな」


 ちなみに、サヤの剣術の師匠は当然俺ではない。

 俺は、彼ではサヤの相手にならなくなったので、後を任されただけだ。


 俺は、メリュー時代を振り返る。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 メリューの隣国、チングルが滅ぼされてからは、ほぼ休みなしだった。

 俺達は、便宜上メリュー星と呼ぶが、魔族の撃退の合間に、それこそ隅々まで回り、生存者の確認をしていた。もっとも、結局、そこで救った命も皆無になってしまったのだが。



 チングルが滅ぼされる前、俺は、当時のメリューから見ての最前線、シーニアという国に来ていた。

 位置としては、この、アラガス大陸の中央より少し東、南東部分が海に面する場所だ。それなりの大国でもある。ちなみに、メリューはこの大陸の東の果て。魔族が発生したと思われる、大陸西方の国家、バイゼンとナポランからはかなり離れていた。このシーニアは、その中間といったところである。


 そして、王宮を冠するシーニアの街の城壁の周囲を、ブレスで魔族もろとも焼き払ってきたところだ。


 王宮の中庭の上空に差し掛かると、下では、サヤと、一人の漆黒の甲冑を身に纏った男が目に入る。二人は、訓練用の剣を抜いて対峙していた。


 ふむ、今回は視界確保の為に焼き払うだけの作業だったのでサヤの出番はなく、その間、いつものようにサヤに稽古をつけてくれているようだ。

 そう、その甲冑の男、『ホーシェン・シーニア・ドゥ・ルーファン』が小夜の師匠、このシーニアの若き王でもある。


 俺も、最初はこの男に色々教わったのだが、僅か数日で、


「お前に俺様から教えられることはもう何もねぇな。基礎は理解したようだし、これ以上は、俺様が教えるとかえって逆効果だ。後は、アマンダに教わった魔法と組み合わせながら、我流でやってくれ。そもそも、お前は規格外なんだよ! 俺様の身にもなれってもんだ!」


 だそうだ。

 ま、こればかりは仕方あるまい。



 中庭の中心では、激しく剣がぶつかりあっている。

 だが、見た感じ、サヤが圧しているな。

 技量自体はホーシェンの方が明らかに上なのだが、素早さとパワーの桁が違う。


 それでも、ホーシェンはあえて隙を作り、そこにサヤの攻撃を誘導しているから、かろうじて持ちこたえている。


 ほどなく、ホーシェンの剣が弾き飛ばされた。

 なので、俺も、ゆっくりと二人の側に舞い降りて行く。


「サヤ、なかなかやるようになったな! だが、お前はまだまだ未熟だ。俺様に勝てたのは、その召喚者の力のおかげだって事を忘れんなよ!」

「師匠、今日もありがとうっす! はいっす! それは、シンさんからも言われてるっす。それで、約束のものをお願いするっす!」


 ん?

 約束のものってなんだ?


 すると、ホーシェンは呆れた顔をしながら虚空に手を突っ込み、一枚の金貨を摘まみ出した。


「ほらよ! まあ、俺様にとっては、もう無用の長物になるかもだからな。しかしお前、師匠に金せびるって、おかしくないか?」

「約束は約束っす! そもそも、『俺様に勝てたら金貨1枚くれてやる』って言ってきたのは、師匠のほうっす!」


 サヤは、にっこり微笑んでホーシェンが投げた金貨を掴み取り、俺を見上げる。


「シンさん、お帰りっす。で、終わったっすか?」

「ああ、文字通り、焼き尽くして来たよ。街の城壁と見張り櫓(やぐら)にも、弩(いしゆみ)が配備されたし、当分は持つはずだ。もっとも、あの『バースト』の魔法が込められた矢の数が心配ではあるけど」


 そう、現状、サヤ達のような魔力もなく、魔法にも長けていない、普通の人間に可能な魔族への有効な攻撃手段はあまり無い。

 そもそも、100m以内に近づかれたら即死ってどんだけよ?


 なので、長射程での攻撃が必須な訳だが、通常の弓では当たっても全くダメージを与えられない。サヤも、単純に斬るだけでは全く手応えがなく、すぐに再生すると言っていた。だが、魔力を刀に込めて斬ると、いともあっさりと駆逐できるそうだ。俺も見たが、影が四散し、煙のように消えていた。どうやら、火属性以外の魔法、ないしは魔力そのものによる攻撃が弱点なのは間違いない。


 そこで考えた末に登場したのが、やじりに魔法を込めた石を使用する事による、大型の弓、弩による攻撃方法だ。

 魔族の足元を狙い(魔族そのものに命中しても突き抜けてしまう)、そこで爆発(魔法を発動)させることで、ダメージを与えられる。運が良ければ一撃で葬れる。もっとも、まだ人間状態の奴ならば通常の攻撃でも問題無いのだが、やはりこれも50m以内に入られると負けなので、矢は必須だ。



 すると、ホーシェンも俺を見上げてから、軽く頭を下げる。


「おう、シン! ご苦労さん。本当に助かったぜ。矢の方は、アマンダにも既に頼んであるから心配は要らねぇ。シーニアでも、作れる奴は多いとは言わないがそれなりに居るしな。それで、おい、お前達!」


 ホーシェンが振り返ると、中庭への扉で頑張っていた護衛の兵士二人が、慌ててこちらに駆け出す。


「「はっ! ルーファン王!」」


 二人は、すぐさま俺達の前で跪く。


「あ~、そういうのは俺様の趣味じゃねぇんだ。立ったままでいいって、いつも言ってるだろ」


 二人は、当惑した顔でサヤとホーシェンを見、最後に俺を見上げる。


「ですが、王だけならともかく、サヤ様も居られますし。増してや、シン様まで……」


 う~ん、俺もこういうのは苦手だ。

 俺が戸惑っていると、サヤとホーシェンがフォローしてくれる。


「あ~、あたいは師匠の弟子っすから、師匠以下の扱いでお願いするっす」

「だな。サヤは俺様の妹みたいなもんで、シンは俺様のダチだ。なんで、そこまで畏まる必要はないぞ」


 うん、これには俺も本当に感謝している。

 現状、俺とサヤに対等に接してくれるのは、この男だけだ。

 他は、大抵は畏怖の念丸出しだ。

 もっとも、この俺の容姿に問題があることは否めないが。


「「しかし……」」


 尚も膝を上げようとしない二人に、今度はホーシェンがしゃがみ、二人の肩を軽く叩く。


「だから、気にするな! このご時世、確かに、この二人はこの世界の希望だ。シンがサヤを乗せて飛んでいるのを見るだけで、凄まじい安心感だ! まだこの世界は終わっちゃいねぇって実感できる! だがな、こいつらだって、中身は俺様達と一緒の人間なんだよ。それだけは絶対に忘れるな!」

「「はっ!」」


 二人は、ようやく腰を上げてくれた。


「でだ。お前達、さっきの話は聞いていたな。早速、メリューとの『ゲート』を潜って、バーストの矢を、ありったけ貰って来い! あ、後、夜間照明用の、フレアの矢もな。アマンダには既に通してあるから、二つ返事のはずだ」

「「はっ!」」


 脱兎のごとく去って行く二人を見届けた後、俺は、今まで疑問だったことをホーシェンに尋ねてみる。


「ところでホーシェン、いつも思うんだが、何故、俺達召喚者は、こうもチートなんだろうか? まあ、俺が規格外だってのは理解できるが、サヤは生身の人間だぞ?」


 そう、サヤの身体つきは、普通のアスリートと大差無いと思う。華奢ではないが、ボディービルダーには敵うべくもない。


「もっともな疑問だな。それに関しては……、俺様も良く分らん! だが、アマンダの話によるとだな……」


 ふむ、それによれば、俺達の魔力を、筋力や反応速度等の身体能力に変換していると考えられるそうだ。つまり、魔法でブースト状態と。

 そして、それを意識せずに出来るのが、召喚者ではないかとアマンダは睨んでいると。確かに、彼女は、魔力はこの世界でも化物クラスだが、運動に関してはからっきしだ。

 また、ホーシェンもサヤの相手ができるくらいなので、彼も、その能力をサヤ程ではないが会得しているのではないかと。


「なるほど、それなら理解できるか」

「ふ~ん、なら、それに関しては、あたいは既に師匠を超えているってことっすよね? じゃあ、明日からは、あたいが師匠の師匠っす!」

「ま、そんなところだ。って、サヤ、何を意味不明な事を抜かしてやがる! 大体、お前、無意識にやってることを教えられる訳ねぇだろが! それに、俺様はお前の弟子にだけはならんからな! あ、後、シン、これからはお前がサヤの相手をしてやってくれ。サヤも、基礎は既にできている筈だし、もう俺様じゃ役不足だ。鍛錬の方法は、以前、俺様が教えてやったのでいい」

「分かった。サヤもそれでいいよな? そして、本当にありがとう」

「はいっす! 師匠、今までありがとうございました! でも、暇な時は、また相手して欲しいっす」

「おう! じゃあ、俺様は街の城壁を見回って来る。お前等は一旦メリューへ帰って、アマンダへ宜しく頼む。では、またな!」


 ホーシェンは踵を返し、肩越しに軽く手を挙げて去って行く。


「じゃあ、サヤ、乗ってくれ。メリューへは、チングルの様子を見るのも兼ねて、空路だ」

「了解っす!」


 サヤは、満面の笑みと共に俺の背中に飛び乗って来た!


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「今日こそ一本取ってやるっす! じゃ、下準備っす! フィジカルバリア! レッグアビリティーアップ!」


 ふむ、気合も充分のようだ。

 サヤは、まずは防御と脚部強化の呪文を唱え、アイテムボックスから木刀を取り出し、俺を睨み上げる。


「フィジカルバリア! よし、いいぞ~。来い!」


 俺も防御を固め、上から睨み返す。

 ちなみにサヤ相手だと、木刀といえども、まともに喰らうと俺でも怪我をする可能性が高い。

 なので、お互いに防御アップの魔法は必須だ。


「行くっす!」


 サヤが、木刀を前に突き出し、そのまま俺の懐に特攻してくる!


「甘いな」


 俺は、それを軽く指で弾いてやる。

 結果、サヤは横に吹っ飛ぶが、勿論それで終わりではない。


「こっからっす!」


 サヤは、着地と同時に、左右に鋭角的にステップを刻みながら突っ込んでくる!

 常人ならば、彼女が分身して見えているかもしれない。


「ここ!」


 俺は、サヤの次のステップ先を予測し、そこに尻尾を差し出してやる!

 当然、こかしてやるつもりだ。


「その手はもう食わないっす!」


 サヤは瞬時にステップをずらし、逆方向に舞い上がる!


「安易に飛ぶなって! 隙だらけだ!」


 空中に居るサヤに向かって、軽くデコピンを食らわせる!


「分かってるっす!」


 ふむ、やるようになったものだ。

 彼女は、それを木刀できっちりガードし、更にその反動をも利用して、着地を取ろうとする!


「いや、分かってない! これで終わりだ!」


 再び、サヤの着地予測地点を尻尾で払う!


「それも込みっす!」


 お、これはいい!

 サヤは、空中でトンボを切って地面に頭からダイブし、向かって来る俺の尻尾を突きに来た!


 俺も慌てて尻尾を引っ込める!


 すると、サヤはそのまま木刀で地面を突き、その反動を利用して、またもや逆方向に跳ねる!


 なるほどね。

 サヤの跳ねた方向は、俺の胸。

 つまり、俺が一瞬怯んだ隙を逃さず、一気に懐に潜り込むつもりと。

 そして、懐に入れさえすれば、ほぼ彼女の勝ちだ。

 そうされれば俺も、逆に自らの巨体が邪魔になってしまうからだ。


 しかし、あそこでは、俺の尻尾を突くと見せかけ、一旦着地して態勢を完全にするべきだろうな。

 空中では、魔法を使わない限り、物理法則には逆らえない。

 俺の胸目掛けて放物線を描くサヤは、俺からすればいい的だ。


 当然俺は、胸先にデコピンを構えてやる。


 もっとも、この速度での攻防は、常人には反応することすら厳しいだろう。


「チッ! しくったっす!」


 当然、彼女も木刀でその指先を斬りつけるが、再び足元には俺の尻尾が待ち構えている!


「だから、飛ぶのはハイリスクなんだよ!」


 今度は、木刀で俺の尻尾を払いに来るが、それは既に想定済み。

 あえて尻尾に当てさせた瞬間、片足を摘まみ上げてやった。


「キャッ!」

「はい、しゅ~りょ~。お前の負けだ。もう一本行くか?」

「いや、仕込みは完璧っす! 秘奥義発動っす!」

「え?」


 げっ!

 摘まみ上げた指先を見ると、そこにはパンツ丸出しの、あられもないサヤの尻が!

 今日は青縞か。って、ガン見している場合じゃない!

 慌てて指を放し、顔を逸らす!


「隙ありっす!」


 ぐはっ!

 後頭部に鈍痛が走った!



「サヤ殿、お見事でござる! 忍法パンチラの術、拙者、感服したでござる! しかし欲を言えば、クマさん模様なら10点満点でござったな」

「お二人共凄いです! 動きを目で追うのがやっとでした! 私は、純白でしたらと悔やまれてなりません!」

「シンさんは修行が足りていないでございますです! 今度、私が二人っきりでみっちりしごいてやるです! 覚悟しときやがれです!」

「サ、サヤちゃん! その手はシンさんにしか通用しませんわ! それと、サヤちゃんも王族になるのですから、もっと節操を持つべきですわ!」


 ぶはっ!

 いつの間にかギャラリーがついていたようだ。

 皆、口々に勝手な感想を並べやがる。


 振り返ると、サヤが俺の背中でミニスカを押さえながら真っ赤になっていた。


「あ~、皆さん、さっきの光景は忘れてあげて下さい。特に、モーリスさんと松井さん!」


 俺が空に向かって軽く火を噴いてやると、二人はマッハで逃げて行く。


 すると、背中のサヤが俺の首に抱きつきながら、


「それ、あたいを独占したいってことっすよね? 嬉しいっす!」


 何でこうなる?

 ま、いいか。


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