第36話 新居
新居
メリューに着くと、既に米軍のヘリは消えており、食堂の前に着地すると、三人が飛び出して来た!
「シンさん、サヤちゃん、お疲れ様ですわ! 大変だったようですけど、うまくいって何よりですわ!」
「シンさん、サヤさん、お帰りなさいでございますです。お二人の分は、ちゃんと残しているでございますです。今から食べやがりますか?」
「二人共、流石でござるな! さっき、岡田殿と松井殿からも感謝されたでござる! あの状況、自衛隊どころか、どこの組織でも不可能だったそうでござる!」
ふむ、モーリスの言う通りかもしれないな。ヘリなんかでちんたら救出していたら、あの鉄砲水をもろに喰らっていたはずだし、そもそも、発見すら危うい。
だが、課題も見えたので、次回からはもっとうまくやるつもりだ。
「はい、ありがとうございます。でも、詳しい話は明日にでも。それで、俺の家、もう使えますかね? 俺ももう限界です」
「そうっす! シンさんを休ませるのが最優先っす! で、なんかあたいもかなり怠いっす……」
あ~、それ、俺がサヤの魔力を消費したからだ。
彼女も魔力切れなのだろう。本当に感謝だな。
サヤは、そのまま俺の背中で寝てしまった。
モーリスの話によると、俺の家はほぼ完成のようで、後は内装だけなので、俺が寝るだけなら何の問題もないらしい。明日、最後の仕上げに来てくれるようだ。
なので、俺はサヤを起こさないように慎重に歩きながら、新居?に入る。
ふむ、40メートル四方くらいの建物で、屋根は半円形になっており、高さも20m近くある。
壁は薄い鉄板のような材質だが、明日、内部にはクロスを貼ってくれるそうだ。
床には、既に木目のフローリングがされており、少し和風な感じ。うん、これはいいな。
俺が入ると、モーリスが壁についた大きなボタンを押す。
すると、電動でシャッターが降りてきた。
ふむ、プライバシーも守られそう…、って訳でもなかった!
上を見ると、天井には、いくつもの透明な窓がついている!
採光用とも言えるが、あれだと空からは、俺が居るかどうかだけならすぐにばれるな。
そして、床も、俺が載ると少し凹むというか、たわむ感じがするのだが、これは仕方なかろう。
大方、フローリングの下に鉄板とかを敷いているのだろう。
また、部屋の奥には、人間が出入りできるサイズの普通の扉も設置されており、これなら、サヤ達の出入りも簡単だろう。
そして、壁の周囲には、明らかに作りかけの施設がかなりある。何が出来るのかと聞くと、人間用の小部屋と、俺の為の大きめの台所、そして、俺専用の便所とのことだ。何やら、公園にあるような砂場が隅にある。どうやら猫扱いのようだ。
まあ、便所はともかく、充分過ぎると言えよう!
これは米軍に感謝だな!
「あれだけの時間でここまでって、流石ですね! じゃあ、遠慮なく休ませて……」
俺はそこで落ちてしまったようだ。
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「おお~、早速入ったようだな。それで、どうかね?」
「はっ! ロキの重量は、約33万ポンド! 約15トンです! 意外と軽いですね。あのサイズの鯨だと、50トンくらいありますよ」
「ふむ、象3頭分か。だが、それは空を飛ぶ為と考えられるだろう。それで、その他は?」
「最初に入った人間の重量が、52キロ! 後から入ってきたのが、47キロと41キロです!」
「おそらく、最初に入ったのは、岡田かモーリス。47キロが、フェンリルかリン。41キロは、フライアと推測されるな。うむ、衣服等の誤差は出るが、上々だ! 引き続き、彼等の健康チェックを続けてくれたまえ」
「はっ!」
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翌朝、俺が目覚めると、既に皆起きていたようで、俺の隣に机が並べられており、そこに茶碗と箸とかが用意されていた。
どうやら、これからはここが食堂になるようだ。
サヤとソヒョンが、奥の扉から、大きな鍋を抱えて顔を出した。
「起きやがったでございますか? 今朝は、昨日の残りを雑炊にしたでございますです! 疲れている時は、これが一番でございますです!」
「シンさん、おはようっす! 身体のほうは異常ないっすか?」
「二人共、おはよう。ああ、おかげで問題無さそうだ。魔力のほうはまだみたいだが。うん、ソヒョンもありがとう」
すると、アマンダとモーリスも入って来た。
「シンさん、おはようですわ。額の傷は私が回復しておきましたわ」
「そろそろ米軍が来るでござるが、待たせればいいでござる。それで、今日は皆、しっかりと身体を休めるでござるよ」
「あ、そうなんだ。アマンダもありがとう。じゃあ、早速頂くか。サヤ、俺のスウェット頼む」
「はいっす!」
手早く食事を済ませ、外に出ると、予報通りだったようで、しとしとと雨が降っている。そして、入れ替わりにアメリカの工兵やら、建築関係の人が雪崩れ込んで来た。
なので、後は彼等に任せ、俺達は会議室で昨日の総括だ。
「今の所、北朝鮮もあの映像を流しただけで、特に変化は無いでござる。もっとも、クリスの方には、電話とFAXの嵐だったそうでござるが」
これは、外国からの非公式での会談希望も多いようで、周辺国家では、韓国、台湾、それに、中国とロシア。その他では、EU諸国、インド、イスラエルとかだそうだ。
まあ、そんなところだろうな。マスコミに番号がばれている以上、それなりの国なら、簡単に分かるのだろう。
クリスには悪いが、こればかりはどうしようもなかろう。
現状、全て保留とし、可能であればこちらからかけ直すという事なので、慌てる必要はないようだ。
「それで、あの件、いくらになったっすか? あたいも、金額とかは何も聞かなかったっす」
「それは、今査定中とのことでござる。あまり安い金額ならば、メリューもこれから受けられないと岡田殿に申したので、大丈夫でござろう。拙者の読みでは、最低でも300万でござるな。噛ませる会社の件については、明日、タカヒロから連絡があると思うでござる」
ふむ、あれは捜索人数と時間で計算すれば、格安になる。しかし、夜間の雨中、何処も不可能だったということを考えれば、それくらいは貰ってもいいだろう。
「分かりました。ですが、やはり俺達には、まだ知識と場数が圧倒的に不足しているようです。人数も、後一人は欲しいですね」
「そうでござるな。知識に関しては、既に松井殿に相談したでござる。人に関しては、拙者やクリスでは足手纏いでござるし、リン殿、どうでござるか?」
リンは喜々として答える。
「体力なら自信あるでございますです! 私に任せやがれです!」
うん、リンは工作員としての訓練を受けていたようなので、これは期待できそうだ。もっとも、成績は良くなかったようだが。
「そ、そうですわね。では、リンさん、お願いしますわ」
しかし、アマンダは上目遣いに顔を伏せ、両手の人差し指を、机の上でつんつんと合わせている。
ぶはっ!
子供ですか?!
まあ、気持ちは分かるが、やはりアマンダ自らというのは、止めたほうがいいだろう。
俺もアマンダが居れば、それこそ不可能な救助活動は無いと思うが、彼女にはここで構えていて欲しい。何かあった場合、テレポンできる人を残しておかないといけないし。
そして、彼女もそれが判っているから、口を挟まないのだろう。
その後は、ソヒョンにお茶を淹れて貰い、モーリスの指示通り、皆で寛ぐ。
もっとも、モーリスだけは奥でPCと睨めっこしていたが。
聞くと、会談を希望して来た国のリストを作り、用件を予測し、その結果、何処から先に会うのが最もいいか、考えているらしい。
「台湾からでござるかな~。でも、やはり同盟が出来てからのが……。いっそのこと、イスラエル……」
モーリスがぶつぶつ言っていると、岡田が来た。
「昨夜は、シンさん、サヤさん、ありがとうございました。それで、もし、時間に余裕があるなら、TVをつけてみませんか? 国会中継していますよ。メリューとの同盟に関する質疑です」
ふむ、それは見てみたいな。
まあ、見たところで、俺達でどうこうできる訳でもないのだが。
「そうですわね。モーリスさんも、気分転換に如何ですの?」
「そうでござるな。やはり、日本との同盟が最優先でござろうし。岡田殿も、一緒に見てくれるのでござろう?」
「ええ、喜んで」
画面には、衆議院の、あの議場が映し出される。
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