第11話 アメリカの接触
アメリカの接触
翌日は、朝食を冷凍食品のお世話になった後、早速、島の造成作業開始だ。
皆で頑張った甲斐あって、日が暮れる前には、何とか、思っていた形にできたようだ。
具体的には、環礁部分と中央部分との間に、幅50メートルほどの堀を残して、後は全て土地にした。広さとしては、直径5~6キロほどしかないが、暫くはこれで充分だろう。
もし、移民が来てくれたりして、手狭になったとしても、その時に考えればよかろう。
早速、新藤と松井も乗せて、上から様子をチェックする。
まあ、ちょっと自慢したかっただけではあるが。
「おお~、流石ですね~。うん、堀を残す発想も悪くないですね。あれなら、海からあの環礁部分に辿り着けても、本島に侵入するには、また泳がないといけない。いっそ、あの堀、鮫でも飼いますか?」
ふむ、そこまでは考えたこともなかったが、新藤が言うのもありかもな。
堀の水深も、100mくらいはある。充分に飼えるはずだ。
「はっ! 私もいい考えだと思います! しかし、あの堀は、外海とは繋がっておりませんので、魚を飼うに厳しいかと!」
「あ~、そうっすね。じゃあ、何ヵ所か穴開けるっすか? あたいは、あそこで鮪を養殖したいっす!」
「お、サヤ、それはいい考えかも! 現在、うちは食料自給率0%だ。早速近大鮪を仕入れるか?」
「近大鮪というのは分かりませんが、あそこで魚を養殖するのは面白そうですわね。そして、皆さん、お疲れ様ですわ!」
「うん、本当にありがとう。じゃあ、降りる前に、少し周りも確認していいですか?」
そう、遠目からは見えていたのだが、この島を中心に集まっている艦船群を、俺は間近で見たかった。
「あはは、うん、それがいいでしょう。私も確認してみたかったですよ」
「じゃあ、ゆっくり高度を上げるんで、サヤはアマンダを。松井さんは、新藤さんを支えてあげて下さい」
「はっ!」
「了解っす!」
「では、グラビティーバリア!」
俺は高度を上げ、先ずは西へ向かう。そこは、自衛隊の集結場所だったはずだ。
松井もそれを聞いて、何やら交信しているようだ。
「思ったよりも少ないっすね。3隻っすか。で、あの真ん中のが、噂のヘリコプター空母って奴っすか?」
「ええ、あの艦を中継地点にして、ここに物資を運んだんですよ」
ふむ、俺も初めて見るが、結構でかいな。
そして、その船の両脇には、ぴったりと護衛艦が張り付いていた。
また、サヤはそう言うが、こんなたったの3人の国の為だけに、3隻もの護衛艦を派遣してくれていると考えると、何か、とても申し訳ない気がする。
「はっ! あれが、自衛隊の誇る最新鋭護衛艦、加賀です! 全長248m、全幅38m、排水量は……」
松井がうんちくを垂れてくれるので、振り返ってみるが、皆、全く聞いていないようだ。
アマンダまでもが身を乗り出して、艦隊に釘付けになっている。
「じゃあ、ぎりぎりまで高度を下げるか」
「はっ! ですが、着艦はしないで欲しいとのことです!」
ぶはっ!
俺も、流石にそこまでは考えていなかった。
自分の重さを計ったことはないが、降りたら、沈むかもしれんな。
海面近くまで高度を下げ、艦隊をぐるりと一周すると、何人かが甲板に出てきて手を振ってくれる。なので、俺も前脚で応える。
うん、メリューの印象は悪くなさそうだ。
「じゃあ、次は北に向かうか。えっと、ロシアでしたっけ?」
「ええ、私もそう聞いています。ですが、あまり刺激しないほうがいいでしょう」
まあ、そらそうだ。ロシアは今の所、日本とは違って、なんのコネもない。
近寄りすぎると、びびって発砲されかねないな。
「じゃあ、また高度を上げますね」
3000メートルくらいまで高度を上げ、下を見ると、こちらも3隻。日本とは違って、少し大きめの艦と、それの護衛と思われるのが居た。
しかしこの距離だと、俺は見えても、他はあまり見えないかもな。
「ファーサイト! ん? 何か、いっぱい筒を積んでますのね」
「え? そうなんすか? ファーサイト! あ、逃げるっす!」
ふむ、その心配はなかったか。
振り返ると、いつの間にか、新藤と松井も双眼鏡を当てている。何気に用意がいいな。
そして、サヤの言う通り、連中は一斉に半円形の航跡を残して、転舵していく!
しかし、ここまで慌てて逃げるとは、何か後ろめたい事をした自覚でもあるのだろうか?
ふむ、魚雷犯の可能性ありと。
「真ん中のが、スラバ級巡洋艦かと思われます! あの筒はミサイル発射管です! そして、警戒させてしまったようです!」
「うん、色々と思うところはあるが、今の所、実害はないし、新藤さんじゃないけど、刺激しないでおくか。じゃあ、次は東、アメリカを見よう」
アメリカは、流石と言える陣容だった。
空母を中心に、その周りに、駆逐艦? フリゲートって奴か?が、4隻展開していた。
「あれこそが、同盟国アメリカの誇る、西太平洋、インド洋担当の、第7艦隊です! それでも、半分以下ですが」
ふむ、こいつらは、近寄っても逃げる素振りを見せない。どっしりと構えてやがる。流石は世界の警察を自負しているだけあるな。
まあ、メリューと日本で同盟を結びたがっているのは知っているだろうから、日本から見ての韓国みたいなものか? 用心はしているだろうが、攻撃されることはまずないと踏んでいるのだろう。
ん? しかし、何やら空母の甲板に動きがあるようだ。
何人かがこちらに手を振り、オスプレイって奴だな、プロペラを上に向けた飛行機の周りに、人だかりが出来ている。
「新藤さん、あれ、まさかと思いますけど?」
俺が振り返ると、新藤は渋い表情だ。
「う~ん、あちらさんも痺れを切らしたようですね。はい。シンさんの考えている通り、メリューに接触するつもりでしょう」
ふむ、俺がこうやって飛んでいることで、こちらも一段落したと判断されたか。
もっとも、島が出来上がるまで待ってから、美味しくって考えもありだろうが。
「アマンダ、どうする? 相手がそのつもりなら、このまま、こちらから降りるか? あの空母なら、俺が載っても沈まないだろ」
「いえ、シンさん、メリューで迎えましょう。こちらから相手の懐に入るのは得策ではありませんわ」
なるほど。こっちの土俵でやりたいと。
伊丹の時は仕方なかったが、俺達には、細やかではあるが、既に拠点がある。
「分かった! じゃあ、帰ろう」
俺達が島に降り、サヤとアマンダが家に入ると、早速、上空にあの飛行機が見えた。
陽は、もう水平線で寝そべっている。
松井が気を利かせて、誘導してくれるようだ。ヘリの着陸用にと、念入りに平らにした部分で、光る棒を振ってくれている。
俺もその後ろで、ドラゴン形態のまま、着陸ポイントを指さす。
ちなみに新藤は、日本領事館と言うべきか?もう一棟の仮設住宅に引っ込んだ。
うん、ここからのことは、アメリカとメリューの話だ。日本は関係ない。
着陸した飛行機の後部ハッチが開き、そこから3人降りて来た!
一人は真っ白な軍服を着ており、もう一人は赤いネクタイのスーツ姿、最後の一人は女性士官だろうか? くすんだ緑?鶯色の軍服だ。
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