オモチャンガーZ

かもがわぶんこ

最終話みくちゃんのペペを救え!



「おかーさん、ぺぺちゃんの足が壊れて歩けなくなっちゃった!」


「見せてごらん。あ〜、もう寿命だよ。」


「え〜やだぁ。おかーさんぺぺちゃん治して。」


「えっ、おかあさんそんなことできないよ!」


「治して!治して!おばーちゃんに最後に買ってもらったもんだもん!」


「もう、みく来年は小学校でしょ、いつまでもおもちゃで遊んでないの。」




★ 説明しよう!保育園のミクちゃんが抱えているのは去年他界した静岡のおばあちゃんに買ってもらった「ウォーキングトークペットぺぺちゃん」という犬のおもちゃなのだ!

 それはそれは、ぺぺに愛情を注いでいたのだが、ぺぺの後ろ足はもうみくちゃんの愛情を受け止めることができないくらいに樹脂が弱わり、内部で折れてしまい歩行ができなくなっていたのだ。★




「そんなにグズらないでよ!みく買いものに行こっ。」


「行くけど、ぺぺちゃんは大事だもん、おばぁちゃんが最後に買ってくれたんだもん!」


「わかったわよ、今度のお盆に静岡に帰省したらおじいちゃんに治してもらお。」


「うん、絶対だよ!」




★ 説明しよう! 近所のスーパーで、お母さんがおもちゃを材料費だけで治してくれる玩具ボランティアのオモチャンガーZ来店のポスターを見つけたのだった。★




「みくほら、明日おもちゃ治してくれる、人がくるんだって。ぺぺを治してもらおっか?」


「えっ、ほんと、ぺぺちゃん治してほしい!」


「なんで、この人、こんなコスプレしてるの?」




★ 説明しよう!みくちゃんは愛犬ぺぺをバッグに入れてオモチャンガーZを訪ねてスーパまでやってきたのだ、しかし修理までは長蛇の列、みくちゃんは本日最後の患者になってしまったのだ。


オモチャンガーZは次々にやってくるトラブルをあっという間に治していく、青いヒーローのコスプレをし、お腹の出たヒーローはまるでマジシャンのようにくるくるとドライバーを回し、ハンダで電子部品をつないで行った。


次々と最大限の感謝をして会場を後にする子供達。徐々にみくちゃんは彼に近づいていくのだが、彼に少し疲労の色が見える。しかし嘆きの言葉を歓喜に変えるべく、必死に戦っている。★




「おかーさん、おじさん、疲れてるみたい。なんか可哀想だよぉ。」


「そおねぇ、でも何とかしてくれるんじゃない?ヒーローみたいだし。」


「ねぇ、おかーさん、静岡のおじーちゃんっておもちゃ治せるの?」


「うん、できると思うよ、だって電気技師だったからね。」




★ 説明しよう! みくちゃんの母、花子の父親は電気技師で家にもほとんど帰れないくらいの忙しさで家族との思い出もあまり作れなかった。

 父との思い出といえば、母のトメに買ってもらった魔法少女変身スティックが壊れてしまった時、たまたま家に帰っていた父親の孝一郎が花子の大切な魔法少女変身スティックの修理を始めたのだ。


壊れた部品を取り出し、新しい銅線を引き、器用に治していく孝一郎の手さばきをみながら花子はすこし自分の父親を尊敬し、つぶらな瞳でその動きをじっとみつめている。そしてものの10分ほどで治してしまったのだ。


「すごい!おとうさんも魔法使いみたい!じゃぁ花子も魔法使いになる!」


無口な孝一郎は、ただニコニコしているだけで何も言わなかった、ただ花子の笑顔がうれしかったのだ。


話を戻そう、ギッタバッタと修理を完了する我らのヒーローオモチャンガーZ、ようやく最後のラスボスクラスの修理、ぺぺちゃんと対面するのだった。★



「おじさん、ぺぺちゃんが壊れちゃってね、可哀想なの。おばあちゃんが買ってくれたものだから治してください。」


「すみません、あの。この犬の、おもちゃな、ん、で、すが。。。」


「てか!!!!!おとーさん!こんなところで何してんのよ!」


「私はオモチャンガーZだ!それ以上でも、それ以下でもない!」


「何いってんのよ!恥ずかしいからやめて!」


「えっ、ママ、この人おじいちゃんなの?」


「……………ち、ちがうわよ、おじいちゃんは静岡でしょ。」


「どれ見せてごらん、、、こっ、これは!」


「オモチャンガーさん、どうしたの?」


「こいつは重症だ!足のプラスチックフレームが、だ、断絶してる」


「それにね、前はわんわんって鳴いてたんだけど、もう鳴かなくなって。」


「そうか、ちゃん。もう心配ない大丈夫だ、オモチャンガーZが治してあげよう!」




★ 説明しよう! オモチャンガーZはパソコンと大きな箱を引っ張ってきて、その部品をスキャンした、データをパソコンに取り込み3Dプリンターで同じ部品をつくりあげてしまうのだった。★




「すごぉい、オモチャンガーさんぺぺちゃんの足をつくちゃったよ。」


「それで、わんわんって鳴いていたんだね。」


「うん」


「こっ、これは!」




★ 説明しよう! お腹の中の電子部品の基盤がやられていたのだ、迫る閉店というタイムリミット。マスク越しに見る孫の顔に笑顔を灯そうと、オモチャンガーZである彼は必死に戦ったのだ。


閉店まであと10分。最大の難所が彼を襲う。赤の線を繋ぐか、青の線を繋ぐか。彼にもわからなかった、彼は必死に考える、しかし答えはわからない。そんなとき彼の心に去年他界したトメの言葉が届いたのだ!★




【おとうさん、青だよ、もういちど、みくちゃんの笑顔みせてちょうだい。】



「ジュゥゥゥ!」


「わんわんわん!わんわんわん!」



「治った!ぺぺちゃんが治った、オモチャンガーさん魔法使いみたい!ぺぺちゃんと歩いてるよ!おじさんありがとう!」


「ほんとね、よかったじゃん!みく!」


「あの、部品代千円になります。」


「あっ、ちゃんとお金はとるのね。」


「決まりですから。」


「あの、えっと。お母さんいなくなって寂しいなら、うちに遊びにきてよ。みく喜ぶとおもうわ、旦那には言っとくから。」


「な、なんのことですかな?わたしはオモチャンガーZ、日本中の子供の嘆きを救わなければなりません。では。」


★ 説明しよう! そしてオモチャンガーZはみくちゃんのもとを去っていく、去り行く後ろ姿にサテン地のマントがなびいていた。★


「おじーちゃん、お盆に遊びにいくね〜。」


★ 説明しよう! みくちゃんにはバレていたのだ!

  ありがとうオモチャンガーZ。行けっ明日の子供達のために!    !完!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オモチャンガーZ かもがわぶんこ @kamogawabunko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ