第3話

 だだっ広い駐車場の端のエリア、街灯の灯りが車内に適度に届く暗過ぎず明る過ぎずといったスペースに車を停めた。

 あたかもそうして然るべきなのだと言わんばかりに、サンダルを脱いで運転席のシートに胡座をかきながら座席のヘッドレストを取っ払う。シートを前方にスライドさせていっぱいまでリクライニングさせると後部座席と繋がってフラットな状態になる。

「寛ぎモードなのでそっちも倒しまーす。脱いで上がってー(笑)」

「あ、コレ繋がるんだー」

 助手席側も同様に倒すと大人2人で足が伸ばせるくらいにはスペースが出来る。

 そうするしかないように2人並んで上半身を後部座に委ね思い切り足を伸ばした。


 互いに存在を意識する程度で特段交友関係であった訳でもないにも関わらず、こうして私服姿で会うと、やはり初回にしては照れ臭さはあった。

 また、こう距離が近いと気を使いもするのだが、並んで座っていると前方をボケっと眺めながら喋っていれば良いので落ち着かない程ではない。


 買い物袋から適当なドリンクを手に取り、チョコレートを齧りながら探り探り会話を試みる。

「ウチの地元のマサと同じ高校だったじゃん?確かノンちゃん高校の時付き合ってた彼ともマサんちで一度会った気がするな」

「あぁ懐かしー(笑)」

「今は彼は?」

「いないいない。学生時代ずっとそのコと付き合ってた反動なのか1人がラク過ぎて(笑)」

「言われてみるとオレもそうなのかもなー」

 当たり障りのない話題から共通の話題を掘り下げる。

「こうやって男友達とよく出掛ける?」

「余り機会は無いかも」

「じゃーオレ今日ラッキーじゃん(笑)」

「誘ってくれたから(笑)」

「美人だから誘い辛いのかも?」

「え、私?そもそも友達が多いわけでもないからそういう事情寄りかなと(笑)」

 希は際立つ見た目とは裏腹におとなし目の性格で特定の友達との交友外は無頓着な感が窺えた。


「ルックスが良過ぎるのもあるって!電車でも目立ってたもの(笑)」

「あんなダサい制服で?(笑)」

「そう、スカート短いからたまにパンツ見えてたけどね(笑)」

「マジ…?(笑)」

「ほら、オレやっぱラッキーじゃん!」

「今日はジーンズだし見えないね(笑)」

「ってゆーか、脚も長くね?」

「むしろガリガリだと気持ち悪くない?」

「誰にでもコンプレックスはあるか。手貸してみて、オレ掌めっちゃ小さくて女子にも大体負ける」

「ホントだ(笑)」


 僕は合わせた手をそのまま握り少しだけ距離を寄せた。

「で、いつも女の子にこうやってるんだ(笑)」

「寛ぎモードだからさ(笑)」

「コレは慣れだね…」

「でも、男女で密室で2人だと変なコトするまで行かなくても、突っ込んだ会話とか発展しがちじゃない?」

「男女じゃなくても2人で話が盛り上がるとぶっちゃけがちかもね」


 もちろんこの場もそうなのだろう、少なくともそう判断した。僕はそこまでの意図でこの場に臨んだつもりはなかったが切り込みを入れた。

「高校の時ずっと彼氏と続いてたじゃん?ってことは未だ1人…?」

「と、言えないんだよね…」

「と言うと?」

「彼氏の友達とそんな感じになったことがあり…」

「ほぉ。。」

「彼も知らず…」

「墓場まで持って行くってヤツだ」

「私そうなると断れないんだよね。もちろん強引にどうとかってのではなかったけど」

「めちゃぶっちゃけるな。でも何か分かる!」

「男も止まらなくなるんでしょ?」

「まぁね。ってかめっちゃ男の味方じゃん」

「誰にもどうにでもというのではないけど、そうなってしまうと…、って話」

「先ず2人きりになって更にその先の話だもんね。分かるよ、誰とでもという風には捉えていない」

「じゃぁよかった(笑)」


 希の思いがけないぶっちゃけトークに聞き入りつつも、少しのわがままくらいなら受け入れてくれそうな気がした僕は体を横に倒し、希の膝の上に頭を乗せた。

「じゃぁ膝枕くらいしてー。寛ぎモードだし(笑)」

「お姉さんいる?」

「いない!何で?」

「何となくいそうだと思っただけ」

「よく言われるんだよね。欲しかったよ、美人の姉が(笑)」


 体を返しながら希の方を向き、頭を浮かせて顔を希の胸元に埋め込む。

「乳枕!」

「枕というほどのボリュームがないのが申し訳ないな…」

 それを避ける素振りも見せず希が返す。こうして2人でいる時に頭が乳房に触れることを意外に女性は嫌がらないのだと、ここ最近の大きな発見でもあったため、こうして反応を窺う手法となりつつあった。


 どさくさ紛れに片方の掌で服の上から乳房に触れたところでビックリしたような表情を示したが、顔を近づけると顎を差し出されたような気がしたので唇でその小さな口を覆った。

 手際よくブラのホックを外し、Tシャツをしたから捲ると小ぶりではあるが形の良い、ピンと張った乳房が街頭の灯りと月明かりに青白く照らされる。その先に吸い付きながらジーンズに手を掛けると「ンッ…」と声を漏らしながら腰を浮かせた。

 無駄なぜい肉のない希の張りの良いというよりは緊張のため硬直したような細い体を、僕は真正面からぎこちなく貫いた。

 腹部に薄っすらと入った縦に割れたヘソまでの筋に指先を這わせながら、無我夢中で希を突き、果てた後も暫く2人で重なったまま動くことが出来なかった。


 気不味さよりも照れや恥ずかしさで互いに上手く会話が出来ずぬまま車を出した。道中、顔を合わせては照れ合いながら希を自宅まで送り付け、日付が変わる前には床に就いて眼を閉じた。


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