幼少期編12


弟には、大量のおもちゃが買い与えられ、私にはピョン子ちゃんと名付けたウサギのぬいぐるみが一つあるだけだった。だが、弟は弟で成長とともに今でいう多動の傾向が強いことがわかり、周りとは一線を画した成長を見せていくために父の愛情を得ることが難しくなってきた。いつも酔って帰ってきた父は、母をメタ(方言で虫のメスを表す言葉)と呼び、私は白か黒の豚であり、弟のことをバカと呼んだ。


父の母への執着と妄想もかなり激しく、母が仕事の新年会や忘年会で1年に一度外に飲みに出かける際、いつもは午前様の2時3時に帰宅するのが当たり前であるのに、その日に限っては21時前に帰ってきた。小学生の頃までは21時には眠らなければならないという決まりごとがあったが、中学生になってからは、勉強という印籠を持っていたのでそれなりに遅くまで起きていたし、実際勉強したり、本を読んで過ごしていた。母が夕飯の準備をして出かけていき、仕方なく風呂に入った(弟は私と違って無類の風呂好きである)のち、しばらくすると父が帰ってきた。我が家に緊張が走る。何を言われるかわからない。捕まったら最後、私はどんな暴言を吐かれるかという恐怖に怯えなくてはならない。実際、彼が稀に早く帰宅し夕食を共にするときは、できるだけ早く食べ終えて、自分の部屋にこもらなければならなかった。

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