第52話 ???の塔〜見るだけで嫌になった件〜
瓦礫の山をあとにして、近くの町へと向かう途中でエルフは目を覚ました、
「俺は・・・助かったのか?」
体を確認したが大きな怪我はしていない、魔王の呪いからも解放されたようだ。
ショウと聖女もエルフが目を覚ましたことに気づいたようだ、聖女がエルフの前へ来ると優しく話しかける。
「目が覚めたようですね。今は町へ向かっている途中です。どこか痛むところはありませんか?」
エルフは目の前の人間に少しだけ警戒していたようだが、聖女の雰囲気と話し方で次第に警戒を解いていった。
「あんたたちが俺を助けてくれたんだな。人間なのに俺を倒すなんて信じられないけど、ありがとうな」
ショウは助けたエルフが誰かに似ていることに気づいた。
扱っている武器もそうだが戦い方も似ている、人間のことを少し見下している感じも似ている気がした。
聞いてみようか迷ったが、特に話すこともないし何より暇なので聞いてみることにした。
「なぁ、お前サンソンってやつ知ってる?」
サンソンと聞いた瞬間にエルフの顔が少しだけ笑顔になった、やはり何か関係あるのだろうか。
「サンソンは俺の兄貴だよ。人間まで知ってるなんてやっぱり兄貴はすごいなぁ」
兄貴か・・・あいつに弟がいたことは驚きだがまさか弟はダークエルフになってたとはな。
嫌いな人間の中でも更に嫌いなショウが助けたと知ったら、サンソンが一体どんな反応をするのか今から楽しみだ。
町へつくとサンソンの弟をギルドに任せて、二人は宿へと向かった。
「今日も疲れたね〜」
ショウはベッドの上に転がりスライムちゃんを抱きしめていた。
時刻はすでに深夜を回っていた、眠気もピークに達している。
今回も外れだったし、魔王を倒すまではまだ時間がかかりそうだ。
「しかしダークエルフを虐殺したサンソンに弟がいたなんてね。弟と戦ったのが俺じゃなくてあいつだったらどうしたんだろ」
弟でもダークエルフなら殺したんだろうか、あいつならやりそうな気がするな。
お城も壊してしまったけれど大丈夫だろうか、昼間は聖女に大丈夫なんて言ったけど今更になって少しだけ怖くなってきた。
歴史的に価値のあるお城だったりしないよな―――
「魔王を倒すためなら仕方ないよね」
自分に言い聞かせるようにスライムちゃんに同意を求める、スライムちゃんは励ますようにプルプルと体を震わせていた。
気にしても仕方がない、どうにかなるだろう。
スライムちゃんの感触を胸に感じながら、眠りにつくのだった。
翌朝
ショウは久々に静かな部屋で目を覚ました、今日は聖女は来なかったようだ。
スライムちゃんのステータスを確認するとレベルが5000を超えていた、相変わらずレベルが上がり続けている。
「本当に大丈夫なのかな―――」
ステータスは変わらないがレベルだけ上がり続けているのが気になる。
このまま何事もなければ良いのだが、今は祈るしか無いだろう。
ショウが準備を終えて外へ出ると聖女はすでに馬車に乗っていた。
地図を広げて真剣に眺めている、ショウが来たことにすら気づいていないようだ。
「おはよう、ずいぶん真剣に見てるな」
いきなり声をかけられた聖女はびっくりして地図を落としてしまう、ショウが落ちた地図を拾おうとしたら聖女が物凄い速さで地図を回収した。
「おはようございます。さぁ今日も頑張りましょう」
聖女は地図をしまうと何事もなかったかのように馬車を走らせ始める、何か見られたくないものでも書いてあったのだろうか。
ちらりと見えた地図にはこう書かれていた気がした。
『―――まで、あと少し』
肝心なところが見えなかった上、聖女のあの慌てよう―――ショウはかなり気になった。
今度こっそり見てやろう、そう強く誓うのだった。
馬車に揺られること数時間、今日の目的地へはまだ距離があるが、ショウは馬車の中で不満そうに地図を眺めていた。
「方角は合ってるし地図の場所的にも間違いない。ってなると間違いなくあれだよなぁ」
大きなため息を吐いた後地図から顔を上げて、馬車が目指しているものを見つめる。
ショウの視線の先には、空高く向けてそびえ立つ塔が立っていた。
まだ遠くからなので詳しくはわからないが、見る限り結構な数の階層がありそうだ。
まだ入る前なのだが想像するだけで疲れてしまった。
「あれを登らなきゃいけないのか―――」
面倒になったらいっそ昨日のお城みたいに壊してやろうか。
そんなことを密かに考えながら塔へ向けて馬車を走らせるのだった。
塔についたショウ達は、改めてその高さに驚く。
見上げる首が痛い、かなりの高さだ。
t近づいてわかったのだが、どうやらこの塔はエルフのお城のように木をくり抜いて作られているようだ。
「壊すのはだめそうだな・・・」
すでに死んでいる木だと言うことはわかるが、流石に勝手に壊すのはまずいだろう。
エルフ達の性格を考えると、おそらく昨日の城より木の塔のほうがずっと価値がありそうだ。
「じゃあ私はここで待ってますね、気をつけて帰ってきてください。いざとなったらお城のときみたいに窓から飛び出してくださいね」
ひらひらとこちらに向けて手を振る聖女に別れを告げ、ショウは塔の中へと入っていった。
塔の中へ入ると、そこは広場になっていた。
入口の扉と反対側に階段があり、広場には一人のダークエルフが待ち構えていた。
剣と盾を装備し、革の鎧を身につけた剣士だ。
ショウが見てもわかるほど若かった、かなりレベルも低いだろう。
剣士は階段を守るように立ちふさがっている、どうやら彼を倒さないと上に進めないようだ。
「よく来たな、勇者。悪いがここで」
定番のセリフはもはや聞き飽きたショウは、カタナも抜かず剣士へ向けて無防備に歩いていく。
舐められていると勘違いしたのか、剣士は激怒し剣を振り上げて突っ込んできた。
それでもしょうは動じない、振り下ろされる剣を片手で難なく弾き飛ばすと、驚いている剣士の体を軽くたたく。
バシンと言う音が広場へ響き、剣士の体が宙を舞う。
壁に激突した剣士は動かなくなった、ショウは慌てて近寄り呼吸を確認する。
「危なかった・・・」
危うく殺してしまうところだった、気を付けなければ。
剣士を倒した後、ショウは一旦外へ出て聖女を呼びに行った。
「―――っというわけで、悪いけど回復と解呪を頼むよ。俺は上の階に進んで倒しておくから、終わったらどんどん上がってきてくれ。大変だと思うけど任せていいか?」
ショウはいきなり呼ばれて困惑している聖女へ事情を説明する。
塔の中で全員倒した後、背負って戻ろうかとも思ったのだが、あとどれだけいるか分からないのだ。
ならば聖女についてきてもらい、倒す度に任せて進んだほうが楽だろう。
目が覚めたら帰ってもらえばいい。
「もちろん、お任せください。死んでさえいなければ大丈夫ですから」
そう言うと聖女はさっそく魔法を唱え始めた。
彼女は最近やる気に満ち溢れているしいいことだな、この分なら任せて問題ないだろう。
「じゃああとは頼んだ。俺はさっさと全員倒してくるよ」
ショウは聖女を残し上へと登っていく、この調子でどんどん進むとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます