出会ったときは それは 当然 “スタート”

のように見えて

それは 最早 “ゴール” を迎えていた

ことに

僕だけは気が付いていたけど

僕は

気が付いていない振りをして

そして そんな自分に目隠しをして

両の手を不安そうに前に差し出しながら

覚束無い足取りで君に近付き

助けを求めた


君は 僕に助けを求められていながら

それには気付くことなく

逆に 僕に助けを求め

不安そうに前に差し出した君の手を

それにも増して 不安な僕の両の手が掴んだんだ


不安な2本の手と 不安そうな2本の手は

それぞれの勝手な想いで互いに強く結ばれ

見間違うほどの 強い2本の手になった


時々 握り返すことで

お互いの想いを確かめてきたけど

やがて

もう とっくにゴールテープを何百メートルも引きずっている

ことに気付き

強く手を結んでいるにもかかわらず

いつまでたっても僕が目隠しを取ろうとしなかった

ことにも気付いた君は


僕の目隠しを剥ぎ取って

僕の顔の前に 鏡を差し出した






鏡に映った 僕の目は…




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