朝陽が訪れる家



右腕がしびれているのに気がつくのと同時に目覚める

自分のおでこの上に置いていた左腕を少しだけずらすと

オレンジ色の朝陽が目に飛び込んできたから すかさず目を瞑る

そのまま 顔を右に向けると

僕の右腕を枕に まだ静かに寝息を立てている彼女の顔

両腕は胸の前でおそらく組まれていて

白いシーツは口元のところで止まっている

彼女を起こさないようにもう一度 

正面にある 朝陽が射し込む東の窓に顔を向ける

窓は焦げ茶色の木の格子で六つに仕切られているけど

上四つのガラス窓から朝陽が射し込んできていることがわかる

しばらく そのままでいたけど

勇気を出して 彼女の枕になっている右腕をはずす

右腕のしびれに耐えている僕をよそに

彼女は うぅ って小さく呻いたあとに向こう側に寝返りを打つ

僕は少し起き上がり 

四つある枕のうち二つを背もたれにして 再び東の窓を見る

さっきは格子に区切られた四つ分のガラスから朝陽が射し込んでいたのに

この体勢だと 上二つ分からになってしまった

左に目を移すと 

脚が付いた丸い木のテーブルの上には 

昨夜 飲んだワインの瓶と 残り4分の1のフランスパン

瓶には ほんの少し赤いのが見えるから全部飲み切れなかったんだ

右に目を移すと

生成りのソファカバーは少し乱れていて

そこに ジーンズだの ネルシャツだのが無造作に置かれている

そんな僕の目の前に二本の白い腕が伸びてきた

目覚めた彼女が両腕を上げて伸びをしたんだ

「おはよう」

「おはよう」

「だいぶ前から起きてたの?」

「ううん さっき」

「今日もいい天気になりそうね」

「うん」


というシチュエーションと会話の中でこの曲が流れるんだろう って

だから

ずっと若い頃は 「無理だな これは」

って 思ったものです



「Here Comes The Sun」The Beatles

https://www.youtube.com/watch?v=xUNqsfFUwhY

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