Spring Catalog
僕の家にも春物の服のカタログが届いた
日本人の僕に届いたカタログの中で笑顔で佇む男女は白人だ
彼らは春物の服を着て楽しそうに野を走り
春物の服を着てカヌーを漕ぎ
オープンデッキでマグカップを片手に語り合っている
その白人達が着ている春物の服は中国で作られたものだ
中国の人は どの人種が写っているカタログを見て服を買っているんだろう
春は
いい
肌寒ければ着れる服があって
暑ければ脱げる服がある
15年前に買ったお気に入りのTシャツだって
首から胸までを主張するインナーとしてまだ立派に働ける
歌は
聞き流せばいいし
新しい歌は
無理に仕入れなくてもいい
着古したTシャツのように
その輝きは変わらないから
想い出は
思い出したら出しっぱなしにしておけばいい
新しい想い出は
心配しなくてもいい
自分の意と関係なく勝手に作られていくものだから
別れは
告げられるまで言い出さなきゃいい
出会いは
求めなくてもいいし
待っていなくてもいい
そんなものは 星占いのネタにしかならないから
ただ
風の音を聞いていればいい
雨の雫を眺めていればいい
薄いもやの中を歩いていればいい
降り注ぐ光に感謝していればいい
カタログの中の笑顔の白人は
そう言っているのさ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます