Spring Catalog




僕の家にも春物の服のカタログが届いた

日本人の僕に届いたカタログの中で笑顔で佇む男女は白人だ

彼らは春物の服を着て楽しそうに野を走り

春物の服を着てカヌーを漕ぎ

オープンデッキでマグカップを片手に語り合っている


その白人達が着ている春物の服は中国で作られたものだ

中国の人は どの人種が写っているカタログを見て服を買っているんだろう



春は

いい

肌寒ければ着れる服があって

暑ければ脱げる服がある

15年前に買ったお気に入りのTシャツだって

首から胸までを主張するインナーとしてまだ立派に働ける



歌は

聞き流せばいいし

新しい歌は

無理に仕入れなくてもいい

着古したTシャツのように

その輝きは変わらないから



想い出は

思い出したら出しっぱなしにしておけばいい

新しい想い出は

心配しなくてもいい

自分の意と関係なく勝手に作られていくものだから



別れは

告げられるまで言い出さなきゃいい

出会いは

求めなくてもいいし

待っていなくてもいい

そんなものは 星占いのネタにしかならないから



ただ

風の音を聞いていればいい

雨の雫を眺めていればいい

薄いもやの中を歩いていればいい

降り注ぐ光に感謝していればいい



カタログの中の笑顔の白人は

そう言っているのさ





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