煩悩




一目で惚れても 軽い挨拶程度

それ以上は喋れない


かなりの低い確率でも 運よく隣同士になったら

君の話に 全肯定の相槌を打つよ


夜の会が始まったら メニューを真っ先に渡して

そして 君の指の動きを見て想像するよ


きっと 君よりも先にジョッキを乾して

でも まだ1本目の煙草には火をつけない


受容の相槌のみをしながら意見せず

その代わりに ブラウスの下を想像するよ


3杯目の途中で1本目の煙草に火を点けて

灰皿は控えめにテーブルの下に置き換えるよ


横を向いて煙を吐きながら耳だけは君に傾け

スカートの下の脚を想像するよ


酔ってくると 君は口を油断して開けるから

君とのキスを想像するよ


君は笑いながら疑問符を投げかけるけれど

今度は 全否定に転じて 君に一撃を食らわすよ


灰皿はテーブルの上に

5本目の煙草の煙は真下に




次の夜の会でも一緒だったら

会の途中で 僕の方から君の隣の席へ

僕はきっと3杯目のジョッキを持って隣の席へ


だけれども 最後の煙草を吸い終わるまで全肯定

前の会の話を振られてなじられても とぼけて見せて全肯定


そして

言いたい気持ちを抑えることができなくなったら

君にだけ聞こえる小さな声で


だけれども はっきりした声で伝えるよ

妄想が現実に変わるのを怖がることなく




伝えるよ



君に 伝えるよ





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