誕生日 前
“誕生日には、きまって良くないことが起きる”というテーマの短い映画を見た。
当たり前のことだけど、それは「テーマ」なのだから、主人公の身の上には幼少から大人になるまでずっと良くないことが起きていた。
そして、当たり前のことだけど、それは「映画」なんだから、見たからといって僕自身が心配する必要はない。
だけど、心配だ。
ここ十何年間は、自分の誕生日が特別な日だなんて思ってなかった。
誕生日を境に、またひとつ歳を取り、稀に、誰かから「何歳ですか?」と尋ねられたときに、「何歳だったっけ…」と少し思い出す時間があった後、答えていただけに過ぎない。
前日の夜の0時前もそわそわしない。そもそも0時前には眠っている。朝起きて「おはよう」と言われることはあっても「おめでとう!」と言われることもない。仕事から帰ってきても、特に、何もなく、ましてや、サプライズなんちゃらなんてこともあり得ない。普通に、ホッケを焼いたやつを食べ、芋とワカメの味噌汁を残さず食べるだけだ。
では、何故に、今年だけ気になるのか。
それは、きっと、映画を見たせいだけじゃない。
最近、知人に誕生日を聞かれたせいだけでもない。
誕生日前に嫌なことがあったせいだけでもない。
だけど、だけど、何故か気になる
こうなりゃ、なんでもいい。
映画の主人公が味わった屈辱でも、悲惨な出来事でも、淋しい出来事でも、なんでもいい。
なんか、あれ!
と、思っている不思議な誕生日 前。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます