六曜



かろうじて見えるはずの 切れ味鋭い三日月は雲の中

グラスを重ねる音は今夜もこだまし

小さいテーブルに敷き詰められる皿は七色

熱めのシャワーでも上手く酔いは覚めず

白熱灯の灯りに永遠を見たい宵は来たらず

挨拶無しで眠りに就いて

夢を見ることもない夢のような時間を過ごす



買ったばかりのコーヒーの袋を開いて

朝のテレビの世の中をすすり飲んでも

気になることはこれからの二人

青空を隠すレースのカーテンは風に揺れることなく

開いた花の図鑑のページの端は折れたまま

短い旅に出ている間の留守番を任されたペンギンは目を閉じ

渡り鳥の声には目を開けないけれど

隠れ家を探す猫の足音に薄目を開ける



日付が変わることない日めくりカレンダーの

今日の六曜も「先負」


届かないけど 待っている

待っていないから 送らない



かろうじて見えるはずの 切れ味鋭い三日月は雲の中

グラスを重ねる音は今夜もこだまし

小さいテーブルに…




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