第6話
その日の帰り道。
部活終わりで暗くなりかけた道を歩いていれば、
誰かに背中を叩かれる。
「わっ・・!びっくりした・・!」
「びびりすぎ。」
「そりゃびびるでしょ!」
そこにいたのはケラケラ笑う翔で、
どうやらいつもより部活が早く終わったらしい。
他愛のない話をしながら、
2人で帰り道を歩く。
けれどなんとなく、
なんとなく翔の様子がいつもとは違うのを感じて。
「・・なあ、絵未。」
「俺さ、あおいちゃんに告白することにした。」
ああ、
やっぱり分かっちゃうんだなあ、私。
今日は、いつも通りの日じゃなくなるみたいだ。
「・・そっか。」
少し俯いて、そしてすぐに。
勢いよく顔を上げた。
「・・じゃあ決行日は明日の放課後で。」
「いやまって急すぎない!?」
「そのくらいじゃないとあんた絶対また怖気ずくじゃん!」
「うっ・・否定できない・・」
「でしょー?」
頼りなさそうに俯く翔の背中をバシッ、と叩く。
「今日の気持ち忘れる前に!男なら伝えちゃいなさいよ!」
「・・・分かった。・・・いやでもどのタイミング!?」
「明日あおい部活ないから。放課後部活行く前!」
「どこにしよう!!」
「体育館裏一択ね!明日バスケもバレーも部活休みだから!」
「どどどどうやって呼び出そう!」
「私が伝えとく!」
「なんて言えばいい!?」
「それは自分で考えろあほ!!!」
今度は動揺しすぎてあたふたする翔。
さっきよりも強く背中を叩けば、思ったよりもいい音がして。
「いった・・強く叩きすぎだろ!」
「ごめん自分で思った。」
「手形残ってそう・・・」
本気で痛そうな声を出すから、
ちょっと申し訳なくなって背中をさすってあげる。
気付けば翔の家の目の前まで来ていて、
今度は優しく、翔の肩を叩く。
「ま、明日。頑張ってね。」
「・・・おう。」
じゃあね、そう手を振って歩き出せば、
翔が私の名前を呼ぶ。
「絵未。」
「・・ありがとな。」
振り向かないまま、返事の代わりに手を上げる。
あんたの背中も痛いかもしれないけど、
私の手だって痛いよ、ばーか。
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