第3話

「絵未じゃん、おつかれ~」

「あれ。今日部活は?」

「今日OFFになったの。そっちは?」

「私はもともと水曜日はオフの日。」

「あ、そっか。」


帰り道、

後ろから声をかけてきたのは翔で。


放課後の練習が終わる時間はお互い違うため、

一緒に帰る事はあまりない。

しかし今日みたいにたまたま会う事も珍しくなくて。


「今日体育の授業中、大活躍だったじゃん。」

「お、見てくれてたの。」

「たまたまね。」


なんだよその言い方~、と翔が口をとがらせる。


「かっこいい、って周りの子言ってたよ。」

「いやー照れるね。」

「あおいもね。」

「ぶっ・・!」


反応しすぎ、と笑えば翔は顔を真っ赤にして。


「急になんだよ!」

「本当のことだもん?」

「なっ・・!」

「他の女の子のかっこいいは流せるけど、あおいのは流せないのね~」


くっそ、と顔を真っ赤にしたままの翔は、

無言で私の肩を小突く。

・・可愛いな、なんて思ってしまったけど絶対言わない。


「はやく告白しちゃいなよ。」

「無理無理無理。」

「なんでよ。彼女いたこともあるじゃん。」

「あるけど!・・俺から告ったことは無いし・・」


そう言って俯いたままの翔は、耳まで赤くなっていて。

これだけでこの反応、小学生男子か。


うう、とうめき声をあげて翔は空を仰ぐ。


「・・・好きな人とかいんのかなあ、あおいちゃん。」

「・・だから聞いてあげるって。」

「それは無理。いたら立ち直れない。」

「それが翔かもしれないじゃん。」


いやいやいや、と翔が力強く首を振る。

その拍子に少し癖毛な前髪が揺れて。


普段あまり恋バナというものをしない私とあおい。

彼氏がいない、という事は分かっているが、それ以外は何も知らなくて。


「でも、あおいモテるよ、やっぱ。」

「・・・・」

「誰かに、とられちゃうかもよ~?」

「・・お前、性格わる。」

「聞こえてますけど???」


まあなんとでも言いなさい、と笑えば、

「馬鹿、あほ、ドジ、まぬけ・・最近ちょっと太った?」なんて言い出したから

思わずグーパンチが出てしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る