第2話

ネットが揺れる音がして、

それと同時に女子の黄色い声援が飛ぶ。


「翔くーん!さすが!!」

「ほんとかっこいいよね!!」


「・・そうかなあ。」


後ろから響く女子の声にそう呟けば、

隣のあおいがふふっと笑う。


「絵未、心の声もれてるよ。」

「あれ、聞こえてた?」

「ばっちり。」


今は体育の授業中。

グラウンドを半分に区切って、男女別に試合が行われていた。


翔とはクラスは違うものの、

2クラス合同である体育の時間は一緒で。


試合中の順番でない女子たちは男子の試合を見るの夢中で、

その声援の先には、大体翔がいる。


「さすが翔くん、人気あるねえ。」

「・・・ね。」


強豪と言える男子サッカー部でレギュラー入り、

顔も悪くはなく(どうして上から目線なんだ)、

コミュ力も高く誰とでも気さくに話が出来る。


そんな翔は女子からの人気も高くて。



・・なんか。


「・・むかついてきたな。」

「なんでよ。」

「神様はあいつに与えすぎだよ。」

「何言ってるの~、絵未だっていい所たくさんあるじゃん。」

「なんなのあんた聖母なの。」


聖母って、とあおいは微笑む。


あおいとの出会いは高校に入ってからで、性格も正反対。

どうして仲良くなったのかは覚えていないが、

今では一番一緒にいる事が多い友達だ。


聖母、と本気で呼べるくらいとにかく優しくて。


基本的におっとりしており、部活は美術部。

肩ほどまでの黒髪は癖知らずで、いつもサラッサラだ。



「あれ、次の授業何だっけ。」

「数学だよ。」

「げ、、寝てたら起こして。」


はいはい、とあおいが返事をしたタイミングで

次試合だよ、と隣のクラスの女の子に声を掛けられた。


返事をして立ち上がれば、

また女子の黄色い声援が上がって。

つられてみればどうやらまた翔がゴールを決めたようだ。


「ほんとすごいねえ・・・。」


あおいの声に小さく頷きながら、

グラウンドへと歩き出したのであった。

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