迫る敵意
都の入り口からけたたましく鐘の音が聞こえる。何かを知らせる合図だ。シンとマユは戸惑い、アシフザックは入り口方面を神妙に眺める。メフェリスは従者たちに目配せた。
「様子を見てきます。しばしお待ちを」
メフェリスはそういうと、都の入り口へと走り出す。続いて城からは、オリシュアと兵士たちも出てきた。
「メフェリス! 貴方は彼らとともに地下神殿へ急げ!」
「しかし……」
「ならば貴方の従者たちを借りよう。それで十分だ」
「……分かりました、女王様」
戻ってくるメフェリスを眺めながら、アシフザックが問いかける。
「オリシュア君、鐘の音が止まないようだが何やら緊急事態かね?」
「魔物の群れが来たか、
「そうですか、引き留めてしまって失礼。お言葉に甘えて我々は地下神殿へ急ぐとしましょう」
オリシュアは頷くと、兵士たちと共に駆け出した。鐘の音を聞いた通行人たちは姿を消し、彼女たちの進行を妨げるものはない。
都の入り口付近にオリシュアが着いたとき、そこには聖都の騎士たちが隊列を組んでいた。聖都と砂の都は休戦協定を結んでいる。だからこそ、オリシュアは声を大にして騎士たちに問いかける。
「まるで戦争でもやりにきたみたいじゃないか! 聖騎士たち!」
オリシュアを見送ったシンたちは、メフェリスの案内で地下道を進んでいた。
「砂の都の住人以外、通るところではありませんが今回は特別です」
先頭をメフェリスが、後尾をアシフザックが歩き、その間をシンとマユが進む。地下道は、両壁・天井・床がすべて石のような板で囲われていて、砂が入らないようになっていた。シンとマユは初めての冷たい感触に驚いた。
「メフェリス君。この光はどうなっているのかね? 明るいが熱を感じない。太陽の光でもなければ炎の光でもないようだが」
天井の中の青白い光源をアシフザックは感心するように問う。
「申し訳ありませんが、お答えできません。例えアシフザック殿でも」
「それは残念だ。ところで、この地下道はこのまま地下神殿へと続いていくのかね」
「いえ、一度地上へ上がる必要があります。その出口近くに地下神殿への入り口となるオアシスがあります」
そこで会話はなくなり、先を急ぐ一行。まっすぐと続く地下道を進む。
階段を上り地下道の出口から地上に出る。眩しい空に目を細めて、地平線を見渡すと、一点、緑が見える。その方向を指さしメフェリスが言う。
「こちらです」
「メフェリス君! 待ちたまえ!!」
アシフザックが制止する声に合わせるように、砂の中から砂除けのローブに軽装の鎧を
「そこのガキ二人を置いてけ。それとも俺らと一緒に聖都で賞金を山分けするか?」
盗賊のリーダーらしき男が冗談交じりに言う。シンたちは魔物の子として懸賞金を掛けられていた。
「私を見て物怖じしないとは、砂の民ではないな」
「ガキを追って聖都からここまで来たんだ。ちょっと通りすぎちまったがな」
盗賊たち四人は剣を抜き、シンたちを取り囲む。
「メフェリス君。彼らは間抜けのようだが、気は抜かないほうがいい」
「ええ、アシフザック殿。気は抜きません。しかし、このような間抜けを遺跡に近づけてしまったことを不覚に思います」
アシフザックとメフェリスはそういうと、魔術師は赤い
戦いが始まる。
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