第20話 一方その頃、ローズはチェス勝負で惨敗中
ローズの黒の軍勢はどんどん侵略されていき。
「はい、チェック・メイトだよ」
遂にキングが逃げ場を失った。
これで10戦10敗である。この紳士、ざっと30は年の離れたレディにも容赦しない。
「お強いですわね」
「君は素直だから読みやすい。目の前の戦いにしか意識を置いていないだろう?遠くから狙うものにも注意を払わねば」
紳士は眼鏡の奥の特徴的な目を向ける。
光の当たり方でブルーにもイエローにもなるオパールのような不思議な色だ。
「きっと君の彼氏は美形だろう」
男を見た目で選ぶ浅はかなタイプだと言いたげだ。ローズは頰をフグのごとく膨らませる。
だが悔しい事に当たっている。
フグのお腹に針を刺すように、頰をしぼませた。
「生涯の伴侶の外見を妥協するなんて可笑しいですわ。見目が良ければ許せる事もありますでしょう」
「まあ、それは否定しないよ」
「生理的に無理な方を好きになれると思えません。まあ、良いのが外見だけの場合もありますけど」
見合い写真のロリ伯爵と、パーティー会場でのアレクの姿が同時に浮かんでくる。
「今の、彼・・・は料理上手ですの。神がかった一皿を生み出す為にどれだけ努力をしてきたのか、尊敬できます」
瞼に浮かぶ煌めくメニュー達。なんだかお腹が空いてきた。
「今後、ぶつかる事もあると思います。育ってきた環境が違いますから。でも、どれだけ揉めて泣いても許してしまう気がします。
彼の料理を一口食べさえすれば」
胃袋を掴まれてしまっている以上、逃れられない。ナインの容姿がレベルダウンして、ちょっと太ったり髪が薄くなっても愛せる気がする。
うっとりと語るローズを見て、紳士は微笑む。
「分かるよ。僕の彼氏は音楽家でね。何度も喧嘩して別れようと思ったけど、毎回許してしまうんだ。
彼のヴァイオリンを聴きさえすれば」
お揃いだね、とウインクをされてローズの思考が停止する。
か、彼氏・・・?
「男色家は珍しいかい?ここまで来たら生涯独身でいるつもりさ。子供は持たない。その代わりにー」
ノックの音の後に、ドアが開いた。
見覚えのある水色の髪をした殺し屋の少年が手に飲み物を持って入って来た。
「すみません。売店が店じまいで、もうこれしか」
「ありがとうノン。ご苦労様」
ノンはピンク色の瞳を大きく開けて、小首を傾げる。
「なんでボスの部屋にローズ様がいるの?」
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