第12話 猫カフェオープン!
「ちょっと! あんたたち、今日からお客さんが来るって言うのに、何なのその毛並みは! 目ヤニもついてるわよ!」
「もー。朝からうるさいっすよー。寝かせてくださいー」
「起きなさい! 野良出身のあんたたちに、人間との付き合い方を教えてあげるから!」
「いや、そんなの、いらないっす!」
ばたばたとシャルロットから逃げるルイとロイを目の端に捕らえ、小さな羊皮紙片手に丸椅子に座っているシルヴェスは苦笑いを浮かべた。
今は人の姿なので猫語は分からないが、三匹の性格を知っているお陰で、なんとなくどんな会話をしているのかは想像がつく。
「シャルロット、止めてあげて! あとで私がルイとロイをブラッシングするから、それでいいでしょ?」
三匹が足元を駆け抜けようとしたタイミングで、シルヴェスはシャルロットの両脇を上から捕まえて言った。
シャルロットは不満そうにシルヴェスをちら見すると、体をくねらせて床に寝転がり、シルヴェスの片腕を両前足で抱え込む。
そのまま手首に牙を立て、後ろ足で噛んだ腕を繰り返しキックした。
シャルロットが本気でないのは分かっているが、蹴られるたびに牙が食い込んで地味に痛い。
「やめてやめて」
シルヴェスは捕まった腕を急いで引っ込めた。
シャルロットは、つんとした態度で離れていく。
「ひょっとして、相性最悪の三匹を集めちゃったかな?」
シルヴェスは頬をかいた。
でも、まあ、なんだかんだで喧嘩にはなっていないから、とりあえず良しとしよう……。
「それより、今日の予約の確認をしなきゃ」
シルヴェスは再び羊皮紙を目の前に広げた。そこには小さな文字で、時刻と人の名前が書きこまれている。
「えーっと、まず、開店前にサイベルさんからサンドイッチとパウンドケーキを受け取るでしょ。それから、ヨラさんたちが開店と同時に来てくれて、昼頃にフェルとエリスとセグの三人――と。それから、ロウザさんは来られないって言ってたけど、ハバさんは来てくれるし……。あっ、あとルーマおばあさんを忘れちゃいけない」
シルヴェスがぶつぶつとメモの内容を読み上げていると、階下でドアをノックする音が聞こえた。
「あ! 早速サイベルさんが来た!」
シルヴェスはぴょこんと背筋を伸ばし、一目散に階段を駆け下りる。
「はーい。今開けます!」
声をかけながら丸テーブルの間を縫って玄関まで行き、ドアを押し開けた。しかし――
「あれ?」
人の気配がない。不思議に思ってシルヴェスが緑に包まれた庭を見回していると、その足元を何かがすり抜けて店内に入った。
「わっ! 何?」
驚いて振り返るシルヴェス。途端、彼女の目が丸くなった。そこにいたのは白いもふもふの塊だったのだ。しかも、「それ」は彼女を見返している。
「あっ、あの時の白猫……?」
シルヴェスは驚きの声を漏らした。白猫は悪びれる様子もなく、さも当たり前のように床の上で毛づくろいを始めている。
「どうしたの? 何しに来たの?」
シルヴェスが人の言葉で問うと、白猫は動きを止め、彼女を品定めするかのような目つきで見上げた。それから尻尾を一振りし、奥の階段の方に向かってすたすたと歩き出す。
「ええ? ちょっと、どこに行くの?」
シルヴェスは慌ててその後を追った。白猫は我が物顔で階段を上っていく。
ひょっとして、上にいる三匹の気配を感じて中に入ってきたのかな?
そんな仮説を立てながらシルヴェスは白猫について行き、二階の猫カフェスペースをのぞいた。
見ると、突然の白猫の登場に、シャルロットとルイとロイの間には緊張が走っている。シャルロットにいたっては毛づくろいの途中で注意が逸れたのか、しまい忘れた舌が口からはみ出していた。
しかし、白猫は固まっている三匹には構わず、部屋の隅の猫用遊具にそそくさとよじ登る。
そのまま遊具の一番高いところで香箱を作り、シルヴェスを見下ろした。
「そこで落ち着いちゃったの? いや、私は猫が一匹増える分には構わないんだけど……」
シルヴェスは苦笑しながら白猫に声をかける。ところが白猫は返事をする代わりに首を引っ込めたので、シルヴェスから白猫の顔は見えなくなってしまった。
「本当にミステリアスな子ね……」
シルヴェスは独りごちた。折しも、爽やかな青年の声が一階から響いてくる。
「シルヴェスちゃーん。いるー? 注文の品持ってきたよー!」
「あ、はーい!」
シルヴェスは慌てて一階に舞い戻った。玄関に、小ぶりの木箱を持ったサイベルが立っているのが目に入る。
「二階にいたんだね。ドア開けっぱなしだったから中に入っちゃった」
「ああ! 構いませんよ! それより、届けてくれてありがとうございます!」
「いえいえー」
サイベルは愛想良く笑みを浮かべながら、シルヴェスに木箱を手渡した。
その容姿は相変わらず恐ろしいほどに整いすぎている。
うーん。やっぱりお人形みたいだなあ。
すでにベーカリーで何回か会っているのに、シルヴェスはついついサイベルの顔を盗み見てしまう。
サイベルはシルヴェスの視線には気づかず、興味深そうに店内を見渡した。
「へえ、これが一階のカフェかあ……。カムフラージュ用とは思えないくらいお洒落な内装だね」
「えへへ。ありがとうございます」
シルヴェスは少し照れて、木箱を一番近いテーブルの上に運んだ。箱の中からは、ほんのりと甘いパンの香りが漂っている。
「表の看板で見たけど、お店の名前は『シルヴァンメイト』になったんだね。本当にファンタジーの森に迷い込んだみたいなインテリアだ。この幻想的なキラキラの飾りは魔法で作ったの?」
サイベルは玄関先に置かれた針葉樹の鉢植えをまじまじと眺めた。その枝からは小さなガラス細工がいくつも吊るされている。
「はい! 魔法学校の同級生に作ってもらったんです!」
「へえー。学校の友達……か。いいね」
「あの、サイベルさん、良かったらお店の中見ていかれます? 開店までまだ時間があるので。二階に上がったら猫たちもいますよ」
折角だからとシルヴェスが提案すると、サイベルはたちまちぱっと顔を輝かせた。
「猫に会えるの? ぜひぜひ!」
その人懐っこい笑みに、シルヴェスは一瞬ドキッとする。思いがけない胸の鼓動にめんくらいながら、シルヴェスはサイベルを店に招き入れた。どうしたことか、彼の顔を直視することが出来ない。
「木の丸テーブルと、黒い椅子の組み合わせかー。シックだねえ。へー。蔓の鉢植えは天井から吊るしてあるんだ。壁に飾ってあるのはドライフラワーかな? 可愛い」
奥の階段まで先導するシルヴェスの後ろで、サイベルはしきりにインテリアを褒めている。しかし、シルヴェスにその言葉に耳を傾ける余裕はなかった。一度意識してしまったが最後、冷静さを取り戻すのは非常に難しい。シルヴェスは顔を正面に固定したまま、逃げ出したい衝動を抑えて階段を上った。
「ね、猫たちはこの扉の向こうにいます」
ドアノブに手をかけ、シルヴェスは口を開く。が、緊張が伝わり、台本を読み上げるような口調になってしまった。
「ど、どうぞ」
扉を引き開けたシルヴェスは恥ずかしさのあまり、扉と壁の間に挟まるようにさりげなく隠れて、サイベルが中に入るよう促す。
「ありがとね」
サイベルはシルヴェスの動揺に気付いているのかいないのか、彼女の前を自然に横切って猫カフェに入っていった。
開かれた扉を挟んで、サイベルの歓声が聞こえる。
「わあ! 猫が四匹も!」
シルヴェスはひょいと扉の陰から抜け出すと、ドアノブを掴んで後ろ手に閉めた。やっとサイベルの背中側に回ることができたので、しばらくは彼の視線を気にしなくて済む……。
猫カフェの中に目を向けると、シャルロットが早速接客と言わんばかりにサイベルにすり寄ってくるところだった。
「わあ、可愛いねー。綺麗な猫ちゃんだ」
サイベルはすぐさまその場にしゃがみ、シャルロットの鼻先に手を差し出した。ひとしきりシャルロットににおいを嗅がせてから、そっとあごの下を撫で始める。その動作だけで、サイベルが猫の扱いに慣れていることが分かった。
「ふわっふわだねー。やっぱり長毛猫の撫で心地は最高だよ」
サイベルは両手を使い、サイベルの顔をくしゃくしゃと撫でまわす。シャルロットは目を閉じ、ゴロゴロと喉を鳴らした。
「あはは。気持ちいいの? 耳の後ろが好きなんだ」
サイベルの手が、首の後ろ、背中へと移動していく。シャルロットはされるがままになり、あっという間に床の上に仰向けに寝転がってしまった。
シルヴェスは舌を巻いた。猫は撫でられ方が気に入らないとすぐに逃げ出してしまうものである。ましてお腹を見せるなど、よほど気に入った時だけだ。
そんなシャルロットを少し離れたところから観察していたルイとロイも、気になる様子でサイベルに近づいてくる。
「おっ、君たちも来たの? ちょっと待ってね。順番に撫でてあげるから」
サイベルは兄弟に声をかけると、遊具の頂上で目から上だけをのぞかせてこちらを見下ろしている白猫にも目を向けた。
「ほら。白猫ちゃんもおいで!」
しかし返事はない。白猫はじとーっとサイベルを見返しただけだった。
「ちぇっ。無視されちゃった」
サイベルは可笑しそうに笑い声をあげて、足元の猫たちと無邪気に戯れる。――シルヴェスは、夢見心地でぼんやりと彼の背中を眺めた。
ああ。羨ましい。私も猫に変身して、あの中に混ざりたい……。
不意にそんな思いが沸きあがってくる。生まれて初めての感情に、シルヴェスはますます自分の気持ちが分からなくなった。
結局、サイベルが猫カフェに滞在した時間はそれほど長くはなかった。
パンの仕込みをしなければいけないからと言って、早々に満足して帰って行ったのである。
シルヴェスは気持ちの整理が付かないまま、その後姿を見送った。
*
「それって恋じゃない!?」
そう興奮気味に声を上げたのはヨラだった。
「恋……なんですかねー……」
シルヴェスは納得がいかない様子で首を傾げる。
「そりゃそうよ! だって、あのサイベル君でしょ? 彼は私の同級生だけど、魔法学校でも『王子』ってあだ名を付けられてたくらいなのよ?」
サイベルが帰ってからしばらくのち。猫カフェにはヨラとその友達が来店して会話に花を咲かせていた。
きっかけは、シルヴェスがなんとなく浮かない顔をしていることにヨラが気付いて、そのわけを尋ねたところからである。
テーブルを囲んで椅子に座るヨラたちの前にはハーブティーと一切れのパウンドケーキが置かれ、シルヴェスはお盆を持ってその横に立っていた。
「王子?」
ヨラの言葉に反応して、ベレー帽をかぶった友達の一人が鼻息荒く身を乗り出す。
「そう。家柄が良くて容姿端麗。しかも性格も良くて猫好きなの」
ヨラはうっとりと虚空を見つめて言った。
「うわ、完璧かよ!」
「でしょー? 正直、お仕事で彼と接点を持ったシルちゃんが羨ましいくらいよ」
ヨラたちの期待の眼差しがシルヴェスに集まった。シルヴェスは反応に困り、苦笑してお盆を胸に抱く。
「シルちゃん。これは運命よ。狙うしかないわ」
ヨラは丸眼鏡を爛々と光らせ、力強く頷いた。
「いやー、でも……」
シルヴェスは目を泳がせて言葉を濁す。確かに、私がさっきサイベルさんにちょっとときめいたのは事実だ。でも、それが果たして恋と呼べるものなのか、シルヴェスには自信がなかったのである。
「あ、ひょっとして尻込みしちゃってる? 大丈夫よ! シルちゃんは可愛いからきっと上手くいくわ!」
どうやらヨラにはシルヴェスの反応が間違って解釈されてしまったらしい。ヨラは、シルヴェスはサイベルに惚れて当然と思っているようであった。
「うんうん! 私もシルヴェスちゃんの恋路を応援するよ!」
「王子様を捕まえちゃえ!」
ヨラの友達も口々にシルヴェスを後押しする。
「えー……。いやー……」
シルヴェスは相変わらずはっきりしない態度で、恥ずかしそうに口ごもった。しかし、そこまで言われると、不思議と彼女もだんだんその気になってくる。
その場の雰囲気や一時の気分で、深く知り合っていない相手に突然恋心が芽生えてしまうことがあるのは、人の心の奇妙なところである。
だから、この時、シルヴェスが頬を赤らめつつ、
「分かりました。頑張ります!」
と答えてしまったのは、この不思議な恋の魔力のせいだったに違いない。
「いけいけー!」
シルヴェスの宣言に、ヨラたちから歓声が上がった。
拍手に包まれたシルヴェスは、照れてお盆を掲げて顔を隠す。すると突然、カタン――と乾いた音が部屋の中に響いた。
何の音?
シルヴェスはお盆を下ろし、店内を見回す。
「あれっ? 窓が開いてる」
さっきのは、窓の木枠が立てた音だったようだ。シルヴェスが窓に駆け寄りつつ部屋の隅を見ると、いつの間にか白猫が姿を消していた。――シルヴェスたちが会話に夢中になっている間に、窓を開けて外に出て行ってしまったのだろう。
「あー、白猫ちゃん帰っちゃったの? まだあの子とは全然遊べてなかったのに!」
ヨラが残念そうな声を漏らす。窓に手をかけたシルヴェスは、困った笑みを浮かべ、部屋の中に顔を戻した。
「えーっと……言い忘れてましたけど、あの白猫ちゃん、実は店の子じゃないんですよ」
「ええ!? そうなの?」
「そうなんです。今朝、開店前に急に入ってきて、あそこに収まっちゃって……」
「それで今さっき、ふらっと出て行っちゃったのね。自由な子!」
ヨラはくすくすと笑った。
シルヴェスも笑い声をあげ、窓を閉めるついでにちらっと外を見遣る。
「あ! 猫好きネットワークの三人が来た!」
フェルとエリスとセグが庭を横切ってこちらに近づいてくるのが見えた。シルヴェスは身を乗り出して手を振りたい衝動に駆られたが、誰かに猫カフェを覗き見られる心配があったので、何もせずにそっと窓を閉める。
エリスたちと一緒に猫と戯れて待っていると、程なくして階段を上ってくる三人分の足音が聞こえ、扉が開かれた。
「シルヴェスー! オープンおめでとう!」
先頭はエリスだ。シルヴェスに明るく声をかけてから、ヨラたちに向かって礼儀正しく頭を下げる。
「皆さんがシルヴェスの言ってた最初のお客様ですね。どうもはじめまして。私、このお店にハーブティーを提供しているエリスと申します」
こんな時にもハーブティーの宣伝を付け加えるのを忘れないのは流石だ。続いてセグが目をキラキラさせてエリスの背後から姿を現した。
「シルヴェス! 久しぶり! エリスのハーブ店で会って以来だっけ? すげー立派なお店じゃん」
「セグ! ようこそ!」
シルヴェスは返事をしながらフェルの姿を探す。彼女は入り口の辺りで立ち止まり、恥ずかしそうにもじもじとしていた。
「フェル、入ってきて。大丈夫だよ」
シルヴェスは優しくフェルを手招く。これはフェルのいつもの人見知りだ。初対面の人と話すのが彼女には難しいことを、シルヴェスはよく理解している。フェルは小走りでシルヴェスに駆け寄りながら、テーブルの上にちらりと目を向けた。
「あ……。パウンド……ケーキ……」
小さく呟くフェル。
「ん? ケーキが欲しいの?」
シルヴェスが聞き返すとフェルは首を横に振り、戸惑っているシルヴェスをじっと見上げた。
「ガラスの……ペンダント……」
「ああ、これ? もちろん肌身離さず着けてるよ。フェルちゃんからのプレゼントだからね」
微笑んで服の中からペンダントを引っ張り出したシルヴェスを見て、フェルはほっとした表情になった。――いつものことながら、この子の発言はよく分からないことが多い……。
一方のセグは、感心したように店内をまじまじと見回して呟いている。
「しかしまあ、よく開店まで漕ぎつけたよなー。この猫嫌いの街で……」
「ここまでも結構苦労したけどね。色んな人に協力してもらって、やっと実現した……って感じかな?」
「ふーん……。でも、これから営業を続けるのはきっと楽じゃないぜ?」
答えたシルヴェスに、セグは気遣わしげな目を向けた。
セグの隣でエリスも口を開く。
「そうそう。シルヴェスには教えておかなきゃと思ってたんだけど、最近、『自警団』の魔女狩りと猫狩りが活発になってるのよ」
「自警団?」
「ええ。魔法使いからの自衛を目的に組織された市民の団体でね……。カラス仮面の殺人が連日続くものだから、彼らはちょっとした恐慌状態になっているのよ。宮廷魔導士も呼ばずに勝手に怪しいと思う人を捕まえるもんだから、実際に狩られているのは魔法使いじゃない人の方が多いみたいだけれどね」
エリスは首を振ってため息をついた。
「あー……。自警団ね。うちの職場にも何人かいるわ」
ヨラも座ったまま首を伸ばし、会話に参加してくる。
「悪い人たちじゃないのよ。正義感も強くて。ただ、ちょっとだけ頭が固いのが問題なのよねー」
うんうん。と、ヨラの友達も頷いて同意した。
その時、不意にドアをノックする音が部屋の中に響く。
「はーい」
シルヴェスが小走りで行ってドアを開けると、そこにはハバとルーマが並んで立っていた。ハバは頭から帽子を取って微笑む。
「やあ。ごきげんよう。ちょうど一階でこのご婦人にお会いしたんだ。もう皆さんお揃いみたいだね」
「いらっしゃいませ! どうぞどうぞ!」
シルヴェスは二人を部屋の中に招き入れた。
「よいしょ」
ハバがかけ声を上げ、小さいけれど重そうなトランクを運び入れる。
「なんですか? それ?」
シルヴェスが目を丸くして尋ねると、ハバは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「これかい? 開店祝いだよ。ご覧」
そう言って床に置いたトランクを開ける。途端、眩いばかりの光が中から溢れ出した。
「魔法で光るカクテルだよ。この日のために用意したんだ。全部で七種類。シルヴェスちゃんにあげるよ」
「ええっ。いいんですか!?」
シルヴェスは喜びと困惑の入り混じった表情で瓶を手に取った。
「綺麗ですね……」
その光はさざ波が立った水面に映る月光のように、繊細に変化している。
「ありがとうございます」
シルヴェスは満面の笑みでお礼を言った。
ところで、シルヴェスはさっきから、みんなの視線が手の中の瓶に集まっているのを感じている。
誰も何も言わないが、言いたいことはよく伝わった。こんなものを前にしたら、誰だって一口味見してみたくなるだろう。
そんなシルヴェスの考えを読んだかのように、ハバがおもむろにポケットから栓抜きを取り出す。
「お借りします」
シルヴェスは笑みを浮かべて栓抜きを受け取ると、くるっと回ってみんなに向き直った。
「折角なので、今すぐ開けちゃいましょう!」
シルヴェスが言い放つと、わっと歓声が上がる。
「カンパーイ!」
グラスがぶつかり小気味よい音を立てる。こうして猫カフェ営業初日は、昼間から宴会と相成ったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます