第3話 猫の夜

 屋根裏を駆け回るネズミの足音。


 草むらの中から聞こえる虫の声。


 横切る家の窓から漂ってくる焼き魚のにおい……。


 猫に変身していると、そんなものが気になって仕方ない。


 シルヴェスが建物に挟まれた塀の上を歩きながら、きょろきょろと辺りを見回していると、アーサーが不機嫌そうに彼女を振り返った。


「おい。さっさと来い。置いていくぞ」


「あっ。すっ、すみません!」


 シルヴェスは慌てて足を速めた。いつの間にか、まるで親分と子分のような力関係になっている。


「あのね、アーサー? これからどこに行くの?」


 シルヴェスがにゃーにゃー尋ねると、アーサーは煩わしそうに尻尾を左右に揺らした。


「集会があるのは街はずれの広場だ。でも、その前にお前に見せておきたいものがある」


「見せたいもの?」


「ああ。そうだ。俺様は説明が嫌いだ。だから見て学べ」


 そう言って、アーサーは塀から屋根に飛び移った。シルヴェスも後に続く。


 屋根の斜面を上り切ると、彼女の眼下に見渡す限りの夜景が広がった。


「わあ……」


 シルヴェスは思わず感嘆の声を漏らす。


「ここが俺様のテリトリーで一番見晴らしがいい場所だ。昼間は日当たりもよくて気持ちがいい」


「きれい……」


 街の明かりが星のようにキラキラと煌めいて見える。


 やっと、夢にまで見たこの街に来ることができたんだ……。シルヴェスは深い感慨とともに、立ち並ぶ家々を眺めた。


「ひょっとして、アーサーはこの景色を見せるために、私をここに連れてきたの?」


 シルヴェスが問うと、アーサーはバカにするようにフンと鼻を鳴らした。


「景色なんざどうでもいい。それより、お前に見せたいのは『あれ』だ」


「あれ?」


 シルヴェスがアーサーの視線の先に目を遣ると、住宅街の向こうで細い煙が上がっているのが見えた。


「――近づくぞ。覚悟してついて来い」


「えっ? 覚悟してって、一体どういう……」


「うるさい。いちいち説明はしねえって言ったばかりだろうが」


 アーサーは尻尾を一振りすると、屋根の端から街路樹に飛び移った。


 幹を伝い、二匹は通りの上に降り立つ。


 道は街燈に照らされ、石畳がてらてらと光っている。


 賑やかな声が聞こえ、シルヴェスが振り返ると、道沿いのバーで男たちがグラスを片手に乾杯しているのが目に入った。


 夜の街って感じだ。いいなー。


「おい! ぼやっとするな! 急いで道を渡るぞ」


 アーサーの猫パンチがシルヴェスの頭を打つ。その時であった。


「見ろ! 猫だ!」 


 テラス席で声が上がり、男の一人が立ち上がるのが見えた。


「まずい! 逃げろ!」


 アーサーが鋭い鳴き声を発する。


 笑い声とともに投げつけられた酒瓶が、シルヴェスの背後で甲高い音を立てて砕けた。


 シルヴェスは必至で通りを横切り、アーサーの後を追って、建物と建物の間の隙間に走りこんだ。


 隙間はちょうど猫一匹分の幅で、猫の抜け道になっているようであった。


「おい。お前、今、自分が猫になっている自覚あんのか?」


 シルヴェスが追い付くと、すぐにアーサーが怒気を含んだ声で言った。


「ご、ごめんなさい」


 シルヴェスは情けない声で鳴いて耳を伏せる。アーサーはため息をついた。


「謝らなくていい。だが、気を付けろ。ここの人間はお前らみたいな猫好きの魔法使いばかりじゃねーんだ」


「はい……」


「そんな人間に捕まったらどうなるか分かるか? 来い。その目で確かめろ」


 そう言ってアーサーは尻尾を揺らすと、再び歩き始める。


 その目で確かろって、まさか――。


 嫌な予感に彼女は身震いした。


 建物の間を通り抜け、迷路のような路地に出ると、二匹は真っ直ぐ煙の出所に向かう。


「あれだ……」


 街はずれの荒地。茂みの陰に隠れ、アーサーはシルヴェスにそちらを覗くように促した。


 うっ。


 シルヴェスは息を呑んだ。


 こちらに背を向けている六つの人影。彼らの視線は、焚火の上に吊るされ、炎に包まれている袋に注がれている。


 悲しげな鳴き声。毛皮の焦げる匂い。


 袋の中で儚い命が、いくつも燃えていた。


 それが、一つ、また一つと煙に乗って星空に消えていく……。


 人の歓声がやけに遠く感じられた。


「分かったな。じゃあ、行くぞ」


 アーサーがシルヴェスに耳打ちする。


「…………」


 シルヴェスは無言のまま、アーサーの尻尾を追い、静かにその場を後にした。


 二匹は人気のない薄暗い道に戻った。


 風が吹き、街路樹の梢が寂し気な音を立てる。


 シルヴェスの足取りは重かった。垂れ下がった自分の尻尾を、持ち上げる気力すら起きなかった。


 夜気が鼻と耳に当たり、ひんやりと冷たい。


 胸に鉄の塊が入ったかのように、気持ちが沈んでいる。


 何も話したくない……。一人でこの感情を消化したい……。


 今だけは、辺りが静かなのがありがたく感じられた。


 アーサーも気を遣ってくれているのか、一言も発しない。


 理解していたつもりだった。猫が嫌われていることも、迫害されていることも。


 でも、実際は何一つ分かっていなかったんだ――。


 自分が情けなくて、泣きたい気分だった。


「おい」


「…………」


「おいっ!!」


「ふえっ!?」


 彼女が顔を上げると、目の前にアーサーの顔が迫っていた。びっくりしたシルヴェスはその場でバネのように飛び上がる。


 その驚きようを見て、アーサーは呆れた表情を浮かべた。


「おい。いつまで落ち込んでんだ。お前、この街の猫を助けたいんじゃなかったのか?」


 シルヴェスは我に返り、自分のオーバーな反応がちょっと恥ずかしくなった。


「そ、それは、そうだけど……」


 シルヴェスはアーサーから視線を逸らし、前足の爪を噛み始める。アーサーはやれやれとため息をついた。


「しっかりしてくれよ。こう見えても、俺様はお前に期待してんだぜ?」


「えっ?」


 シルヴェスは前足を口に入れたまま、思わず聞き返した。


「期待してるっつったんだよ。最近、猫の間でも妙な動きがあってな。そいつをお前に何とかしてほしいんだ」


「妙な動き?」


 シルヴェスの黒い瞳がちょっと大きくなる。


 そうだ。私は自分にできることをやろう。落ち込んでいる場合じゃない。


 シルヴェスは爪の一番外側の古い層をパリッと歯で剥がして、気持ちを切り替えた。


 アーサーはフンと鼻を鳴らすと、シルヴェスに背を向けて再び歩き出す。


「今から猫集会に向かうが、猫の中にも色んな奴がいる。中でも厄介なのが、人間を過剰に敵視している連中だ。奴らと飼い猫の間では、毎日小競り合いが絶えない。――まあ、猫集会中は基本的に休戦状態だから、喧嘩は少ないがな」


「人間嫌いの猫……。その子たちは、魔法使いのことはどう思ってるの?」


「いい質問だ。奴らは人間が嫌いだが、魔法使いは必ずしも嫌いじゃない。だからこそ、猫に変身できる魔女であるお前は、中立の立場で諍いを解決できる可能性があるんだ」


「そっか。魔法使いは人間の中でも特別扱いなのね」


「そうだ。元気が出て来たじゃねーか。任せたぞ。小娘」


 前を行くアーサーの尻尾がポンとシルヴェスの頭を打った。


 ――猫集会の会場は小さな円形広場だった。


 中央には名前の分からない騎士の銅像が鎮座し、周囲はレンガ造りの四角い建物で囲まれている。


 地面に野菜の切れ端や小銭などの落し物が転がっているところを見ると、昼間は朝市や蚤の市で賑わうに違いない。しかし、夜の広場は真っ暗で、人の気配はなかった。


「ほら。銅像の台座の下だ。見ろ」


 アーサーに促されて目を向ける。そこには毛並みも大きさもバラバラな猫が、十匹近く集まっているのが見えた。


「あっ。可愛い」


 シルヴェスがつい口走ると、アーサーが怖い顔で彼女を睨みつける。


「呑気なこと言ってる場合か。気を引き締めろ。いいか、まずは俺様がお前をみんなに紹介してやる」


「は、はいっ。分かりました。よろしくお願いします」


 シルヴェスは首を引っ込めて答えた。


 二匹が近づくと、猫たちが耳をくるくるさせ、彼らに気が付いて顔を上げた。


「おっす。先輩、その子、彼女っすか?」


「おっす。先輩、彼女いたんすか?」


 最初に声を掛けてきたのは、そっくりな茶トラの兄弟である。


「ばーか。ちげーよ。こいつは新しい同居人だ。この街がはじめてらしいから、連れまわしてやってるだけだ」


 アーサーはうんざりした口調で答えた。


 そんな言い方しなくても……。シルヴェスは後ろでちょっとだけむくれる。


「そっかー。そうっすよねー。びっくりしましたよー」


「でも、可愛い子と一緒に住めるのはいいっすねー。羨ましいっすー」


 兄弟は同じような調子で返事をする。アーサーがシルヴェスを振り返った。


「こいつらはルイとロイ。野良猫だ。どっちがどっちかは俺様も分からん。でも、特に区別する必要はない」


「えー。酷いっす。先輩ー」


「えー。覚えてくださいよー」


 兄弟が抗議したが、アーサーは耳をパタパタさせて無視した。


「あら。貴女、綺麗な黒い毛並みねー」


 今度はどこからか、玉を転がすような声が聞こえる。シルヴェスが見回すと、銅像の台座の下から白黒の長毛猫がこちらを眺めていた。


 ゴージャスなもふもふ!


「あら。そんなに見つめないで。恥ずかしいわ」


 長毛の猫はふわっと尻尾を揺らした。


「奴はシャルロット。貴族の飼い猫を自称している。まあ、実際はお屋敷のネズミ捕り要員なのだろうが……」


 後半は本人に聞こえないように、アーサーが紹介する。


「あいつ嫌い」


「何かむかつく」


 ルイとロイが呟くのが聞こえた。


「あら、野良のお二人さん、負け惜しみですの?」


 すかさずシャルロットが上品に背筋を伸ばして反撃する。


「まあまあ。喧嘩はよしなさいな。それより、まずはあの子に自己紹介してもらいましょう」


 おばさんのサビ猫が割って入り、穏やかにとりなした。その足元から子猫が顔を覗かせ、「お姉ちゃんのお名前はー?」と甲高い声で言う。


「野良の親子。マリシアとそのチビだ」


 と、アーサーの解説。子猫の可愛さに、シルヴェスはつい顔をほころばせた。


「私の名前はシルヴェスよ。よろしくね」


 そうシルヴェスが答えると、次の瞬間――


「シルヴェス! なんてスウィートな響きだ!」


 突然、全身グレーの若者猫が叫んだ。シルヴェスの隣で、アーサーが腐ったものを見たかのように顔をしかめる。


「君みたいにキュートな子ははじめてだ! アーサーみたいな不愛想な男のところじゃなく、僕が飼われている家においでよ!」 


「おい。アルル。てめー、いい加減にしろよ」


 アーサーは苛立ちを露わにし、尻尾で地面をぺしぺしと叩いた。


「ややこしくなる前に言っておくがな。こいつの正体は魔女なんだよ。今は猫に変身してるだけだ」


「えっ?」


 アルルをはじめ、その場にいる猫たち全員の顔が凍り付いた。


「な、なな、なーんだ! それじゃあ前言撤回! そうだ! 人間なら、ごはんおくれよ!」


「どこまでも図々しい奴だな、てめーは!」


 コロッと態度を変えたアルルに、アーサーがピシャリと言い放つ。――アルルが黙り込み、広場は何とも気まずい雰囲気に包まれた。


「え、えーっと……」


 シルヴェスが口ごもっていると、群れの一番遠いところにいた三毛猫が口を切った。


「で、何の用なの? ヒトの娘さん。もしかして私たちの活動を邪魔しに来たのかしら?」


 三毛猫は怪しい光を宿した目でシルヴェスを見つめながら、ペロッと舌なめずりをする。


「かっ、活動!?」


 シルヴェスは思わず声を上げた。


「気を付けろ。あの奥にいる三匹は要注意の過激派だ。三毛がザーラ。ごついサバトラがジャック。ハチワレの青二才がキールだ」


 アーサーが耳打ちした。それにかぶせるように、ジャックの野太い声が響く。


「ああ。俺たちゃあ、人間に報復するために、『カラス仮面』に手え貸してんだよ」


「カラス仮面?」


 シルヴェスが聞き返すと、ジャックの後ろからのキールが興奮気味に目を光らせて叫んだ。


「そうさ! カラス仮面はすげーんだぜ! あの人こそ、俺たちの希望だ! シルヴェスさんも魔女なら見習った方がいいよ」 


「おい、ちょっと待て。お若いの。儂は人間と対立するのは反対じゃよ」


 口を挟んだのは、ぼさぼさの毛をした年寄り猫である。


「ああ? なんだ、文句あんのか『長老』!」


 ジャックが食って掛かる。年寄り猫はあわあわしながら後ずさったが、それでも必死に言葉を続けた。


「そうじゃ! お前らのやっていることは、猫と人の間の溝をより広げてしまう危険がある! 対立を激化させてどうするんじゃ!」


「分かってないわねえ。おじさま。悔い改めるべきはヒトの方なのよ。私たちの戦いには大義があるわ」


「おい。その辺にしとけ。猫集会での喧嘩は禁止だ」


 アーサーがザーラ、ジャック、キールの三匹を睨みつけて唸り声を上げた。


「ちっ」


 ジャックは苛立ちをあらわにし、耳を寝かせて一声威嚇する。


「おい。ザーラ、キール。行くぞ。こんな奴らにゃ付き合いきれねえぜ」


 二匹に声を掛け、シルヴェスたちに尻尾を向けるとスタスタ歩き出した。


「あっ、待って……」


 シルヴェスが呼び止めようとすると、アーサーが振り返ってそれを制する。


「深追いはするな。今回は現状把握で十分だ」


「それじゃあ、私たちもおいとましようかしらね。それから、一つだけ忠告しておいてあげるわ。ヒトのお嬢さん。あなた、私たちの邪魔をするのなら、ただじゃ済まないわよ」


 ザーラはそう言ってウインクすると、キールとともにジャックの後を追った。


 たちまち、三匹は夜闇に姿を消す。


 アーサーはその後姿を見送ると、険しい表情で地面に爪を立てた。


「『カラス仮面』か……。どうやら奴ら、厄介な人間と結びついてしまったようだな」


「アーサーは知ってるの? カラス仮面のこと」


「ああ。噂には聞いたことがある。お前もきっと、他の人間の口から聞くことになるだろう」


 過激派が去った後の広場には落ち着かない空気が流れ、猫たちは思い思いに毛づくろいを始めている。


 ――猫カフェに勧誘できるような雰囲気じゃなくなっちゃったな。


 シルヴェスは思った。


「はあ……。こうなっちゃ仕方がねえ。今夜は俺たちも引き上げて出直すか」


 アーサーは疲れが滲んだ顔を数回前足で撫でると、くるりとその場で体の向きを変えた。


「うん」


 シルヴェスもアーサーに続いて腰を上げる。その時――


「あれ?」


 白い塊がシルヴェスの目に留まった。それは、銅像の足元――どの猫も注意を向けていない台座の上にいる、真っ白な猫だった。


「どうした?」


「いや、あそこに白い猫が……」


 シルヴェスが言いかけた途端、白猫は台座の向こうに飛び降り、さっと姿を消す。


「何言ってんだ。この辺りに白い猫はいねーよ」


 アーサーはシルヴェスの頭をベシッと尻尾で叩いた。


「え? でも、今、確かに――」


「いいからさっさと帰るぞ。俺様は腹が減った」


 アーサーは欠伸をして、速足で歩き去る。


 シルヴェスは釈然としない気持ちで、その後を追った。



 シルヴェスたちが広場を去ったのと時を同じくして、街はずれの荒地では、「猫焼き」に興じていた人間たちの片づけが始まっていた。


 男が四人と女が二人。若者のグループだ。


 彼らの足元には、黒焦げになった塊が四つ。――それらはもはや、原形を留めていない。


 焚火は燠となって赤く燻っている。


「よーし、害獣駆除完了ー。それじゃあ、火ぃ消すぞー」


 男の一人がバケツに入った水を燠の上にかけた。炭がじゅっと音を立て、辺りは闇に沈む。


「ちょっとー。急に暗くなったら何も見えないじゃない。ランプは?」


「あれー? マリーちゃん、怖いのー?」


「怖くないわよ!」


「ほらほらー。魔女が来るぞー」


「もう! からかわないで!」 


 わいわいと騒ぎながら、一人がランプに火をつける。


 ぽう――と周囲が淡い光に照らし出された。


 若者たちは顔を見合わせて笑い合う。


「はー。楽しかった。どう? ちょっと怖いけど悪くなかっただろ?」


「もー。ちょっと怖いなんてもんじゃないわよ。私なんてまだドキドキしてるし」


「でも、猫をやっつけられて良かったでしょ?」


「まあねー。うちの畑にドクムギを撒いたのは、きっと魔女だもの」


「――ちょっと待て、誰か来る!」


 突然、ランプを持った男が、仲間の背後を指さして囁いた。


 静まり返る荒地――。


 風が、草木をさらさらと鳴らす。


 闇の中から、足音が彼らの方に向かって近づいてくる。


 若者たちは、そちらに目を凝らした。


 黒い影が徐々に迫ってくる。時々、ランプに反射して、鋲のような衣装の部品が光る。足音の主は眼鏡をかけているのだろうか? 目に当たる部分には丸いガラスが見える。


 黒いコート。黒いシルクハット。そして、黒いくちばしのついた不気味なマスク。


 その姿がぼんやりと浮かび上がった。


「ひっ!」


 女の一人が耐え切れずに悲鳴を上げる。


「だっ、誰だ! てめえ!」


 前に出た男が、足元に落ちていた木の枝を拾い上げて叫んだ。


 ――返事はない。マスクから漏れる息の音が聞こえるだけだ。


 カラス仮面は、すっと向けられた木の枝に手をかざす。たちまち男の手の中で枝が腐敗し、ボロボロに崩れ落ちた。


「う、うわあ! て、てめえ、魔法使いか!」


 男の声がひっくり返った。


 仮面にはまったガラスの奥で、赤い双眸が怪しい光を宿す。


「に、逃げ……」


 若者たちは散り散りになって逃げようとしたが、一歩も進めずに足をもつれさせて転んだ。


「な、何だ……。体が……」


 地面の上で悶える若者たち。カラス仮面は突っ立ったまま、その様子を黙って見下ろしている。


 若者たちが一人残らず動かなくなったのを確認してから、カラス仮面は静かにその場を去って行った――。

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