第32話 我が家にて3

第32話 我が家にて3


 シャワーを浴びながら考える。彼氏の家でシャワーを浴びるシチュエーション、限りなくやった後の……いや、前と言うことも有る。が、必ず絡んでいる。この状況は、次なるステップを示唆しているのか、否か。等と考えるとそっち方面にどうしても寄ってしまう。


 彼女を抱き締めることが出来たら、そうしたら、……、収まるどころか一線を越す行動に出てしまうと思う。でも、それを彼女が望んでいたら?


 いやいや、お父さんのあの示唆にも反応していなかったのだから、あれについては考えてもいない……、いや、ラルカの発言には反応していたから、全く意識していないわけではない筈だ。じゃあ、どの程度意識しているかだ。多分、いつかは契る相手として意識しているとは思う。たが、いつと彼女が思っているかだ。


 考え込んで洗う手が止まっていた。シャワーを思いっきり顔にかけて、泡を洗い落としていく。


 そう、いつを意識させれば今と思ってくれるかもしれない。いや、俺が思わせるようにリードしないと。決意はできたが、実行に移せるかは別問題だ。風呂場を出て、洗面台の前で髪の毛を乾かしながら、鏡に写った自身を見る。筋肉質ではないが、弱々しくはない体型。背も180は無いが、ヒールを履いたつぐみさんよりは少し高いくらい。


 イケメンとか、カッコいいと言った分類には入らないけれど、まあまあの線だと思っている。そのまあまあがどうだ、と問われても何とも言えない根拠なのだが。


 先ほど、つぐみさんで想像していたシチュエーションを自らやっている。人間、自身に何かしらかコンプレックスが有るものだから、しょうがない。等と考えながらも、手は動いて服を着終わっている。


 洗面所を出てリビングに向かう。部屋にはつぐみさんの姿は無い。あれ?


『つぐみさん、出ましたよ』


『ごめんなさい、断らないで台所使わせて頂いてるわ』


『え?』


『買ってきた食材置きっぱなしだったでしょ。カレーの様だったから作り始めちゃった。でも、ご飯はどうするの、炊飯器無いみたいなんだけど』


『うちは、土鍋なんです。お米洗って水吸わせておけば良かったな、忘れてた。今やっちゃいますね』


 米を数回洗って、土鍋にいれてペットボトルの水をいれる。本当はここで暫く置いておきたい所だが、気休めに5分だけ置いてから強火にかける。


 蒸気が勢いよく吹き出し始めたら、1、2分待ってから火を止めて、本当は20分ぐらい蒸らすのが良いのだけれど、ここは、少し短めに。もうお腹もペコペコだし、カレーの方は既に出来上がっている。


『ちょっとはしょったので、土鍋の良さが十分出ていないかもしれませんが、これで出来上がり』


『土鍋って、こんなに簡単なの? 火加減とか全然してなかったけど』


『強火でやって、後は蒸らすだけなので滅茶苦茶簡単ですよ。お焦げも少し出来てると嬉しいですし』


 と言いながら、土鍋を開けてご飯を混ぜ合わせて、皿に盛り付けていく。張り付いたお焦げを取ってつぐみさんに。


『はい、熱いから気をつけて』


『コリコリしていて、美味しー』


『もう少し有りますから、はい』


 台所で、お焦げにふたりでパクついている。何か新婚生活的な物を感じてしまう。また変な妄想に至らないうちに、お皿を持ってリビングに戻る事にしよう。


 テーブルを挟んで向かい合わせに座り、ふたりで少し遅くなった昼食にありつくことに成る。


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