第27話 公園にて3
第27話 公園にて3
水分の補給も済んで、探索の再開となる。取り敢えず残りの北側を回る感じで、ジョギングてはなく散歩する感じで歩いていく。
風が弱まると、歩いていてもかなり暑く成ってくる。これで走ったら、相当きつい事は請け合いだと思いつつ、森の木陰の道に入っていく。
『この辺りは走らないんですか?』
『下見て分かるように、木の根が露出していて走るのには危険なところが多いから、ここ歩くだけにしているけれど、あまり来ないわね』
そのせいか人も来ないようで、あまり踏み荒らされてないから草木が繁っており、徐々に道を侵食し始めている。
森の奧に入っていくと、それは顕著に現れてきて、道無き道に成りつつあった。
『つぐみさん、こっちで合ってますか?』
『なにか違うような気がするわね』
スマホ出しマップを呼びGPSで位置の確認をする。公園の北の端に来ているようだ。地図には細い道のような線が描かれているが、そのようにしっかりとした物は見えない。
『GPS見ながら地図に沿っていけば、行けなくは無いですが結構厳しいですね』
『ラルカちゃん、君の気配は無いの?』
『うーん、駄目じゃのー』
『ちょっと下生えもきつくなってきたし、つぐみさんの足を傷付けるといけないので、取り敢えず引き返しましょう』
『ごめんね、ラルカちゃん、一旦引き返して反対側に行ってみるね』
『すまんのー』
『ラルカの娘はどの辺りにいるんだい? この先辺りに来てもらえると、行けないところをカバーで出来るんだけど、どうかな』
『さっき移動してきたから、暫くは動けんな。今は南の森辺りにおるが』
『動けるようになったら頼んでみてくれ。じゃあ、つぐみさん戻りましょうか』
前に立って、草や枝をどけながら、道を確保して戻っていく。昼の日差しは森の中までは届いて来ないが、気温は上がる一方だ。風もない森は、だんだんと蒸し暑く成ってくる。
歩いているだけなのに、ふたりとも汗でぐっしょり。時々止まって休む度に見る彼女のシャツが汗で張り付いていって、段々と身体の線があらわに成って来てる。
『セクシーだ』
思わず、感想を伝えてしまった。まずい、思わず叱咤されるかと思ったら、少しつぐみさんがぼーっとしている。もしかしたら熱中症に成りかけているのかもしれない。
『つぐみさん、少し休んで水分を取りましょう』
『ええ』
答えも少し上の空だ。少し開けた風の通りそうな木陰に、シートを敷いてつぐみさんを座らせる。ナップザックから、ペットボトルを出してスポーツドリンクを口に当てるが、上手く飲んでくれない。こ、これは最終手段の口移しをするしかないかも。
息を整え、彼女を抱き抱えて、準備は出来た。スポーツドリンクを口に含み、いざ……
『主、どうしたのじゃ。寝てしまったのかえ』
思わず頭に響いたラルカの声に、口に含んだものを飲み込んでしまう。
『あっ、ラルカちゃん、ちょっとのぼせた様な感じがしてるの』
『つぐみさん、熱中症かもしれないからこれ飲んで、水分補給をして』
ペットボトルを口につけると、今度はちゃんと飲めるようだ。更に汗をかいているが、意識はちゃんとしてきたようだ。
『気分はどうですか? もう少し、ここで涼んでいきましょう』
『ごめんなさい、俊哉さん、ラルカちゃん』
『いえ、僕が一日中探そうなんて言ったせいですから。この暑さをちゃんと考えてなかったのがいけないんです』
『いつも走っている私がちゃんと言わなきゃいけなかったの』
少し風が出てきて、森の中でも少しだけ涼しく感じられてきた。抱き抱えたつぐみさんの上半身をすこしずらして、自分の胸に寄りかかるような体勢にする。
『苦しくは無いですか』
彼女の上半身の重みを感じつつ、背を預けている木の感触を感じている。かけた声に対しての反応がない。腕の中のつぐみさんは、もう。夢の世界の住人に 成っているのだろう。
自分も眠気に誘われそうに成るが、寝てしまう訳にもいかない。彼女の顔色をみたり、汗を拭いたりしていると、そこそこの時間か過ぎていく。
風が出てきたお陰で、少しばかり体感温度は下がって来たような気がする。つぐみさんの体調が良ければ一旦家に戻った方が良いだろう。
『つぐみさん、起きられますか』
反応はない。
『そろそろ起きて移動しますよ』
これも、反応無し。よし、
『つぐみさん、好きです』
これも、反応がない。後は眠り姫を起こす常套手段に訴えるしかない。
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