第26話 公園にて2

第26話 公園にて2


 つぐみさんと一緒に朝食を食べる。用意してくれたのは、サンドイッチと飲み物類、カットフルーツなど。ビニールシートをひいての体制はピクニック状態と化している。


『あの後作ってくれたんですか?』


『ええ、有ったもの切って挟んだだけだから、そんなに手間は掛かっていないだけど』


『とは言っても、卵焼いたり色々してあるじゃないですか』


『その辺は、ぱぱっとやればすぐに出来るわ。父もそうだけど、男性は料理を任せると一品づつ作っていくのよね。平行してやらないと時間ばっかり掛かるのに』


 言われてみると、身に覚えがある。卵焼き等を作っていると、ちゃんと出来上がるまで他の作業が止まっていたりして、母親になんでじーっと見てるの手を動かしなさい、とか言われたりしたっけ。


『いただきまーす。おー、うまい』


『ありがとう、私もいただくわ』


 彼女の始めての手料理を口にして、嬉しさが込み上げてくる。あんなに呑んだ後なのに、食欲は旺盛だ。瞬く間に用意してくれたサンドイッチの半分以上が無くなっている。


『美味しいですね』


『そー言って貰えると、作った甲斐があるわ。もう少し時間か有れば、茹で卵をつかって玉子サンドも用意できんだけど、ちょっと時間も無かったから焼いちゃったの。ま、料理なんて、えいってやって、ぱーっとすれば出来ちゃうから』


 その域に達すれば言える言葉なのだろうが、今のところ自分はそんな擬音では作れそうにない。


『飲み物は紅茶を用意したけど、もしかしてコーヒー党だったりする?』


『どちらも飲みますよ。どちらかというとコーヒーが多いかな。でもアールグレイやディンブラでのミルクティーは美味しいですよね』


『ごめんなさい、今日のはストレートのウバ。ミルクティーは、ミルクインファーストにして飲んだ方が美味しいから』


『もちろんミルクは』


『『冷たいままで』』


 ハモった。自然と合った目から微笑みが溢れる。彼女の顔がキラキラして見えるのは木漏れ日のせいだけだろうか。


 紅茶のカップを受け取り、ちょっと渋みの有る味を楽しむ。レジャーシートに腰を落ち着けてのんびりしてしまうと、完全にピクニック気分に成ってくる。


 のどかな感じは、眠気を誘ってくる。もし、つぐみさんが膝枕でもしてくれたら、きっとぐっすりと寝てしまうに違いない。


『そろそろ行きましょうか』


『ええ、この後はどう回るの?』


『取り敢えず、残りの南の部分を回ってから、北側に行く頃に暑くなってくる筈だから、休憩所で一休みして水分補給でどうかな』


『分かったわ。じゃあ行きましょう』


 軽やかに伸びをしたつぐみさんの髪が風に舞って輝いている。その髪を無造作に縛って、ポニーテールにしたら準備完了の様だ。


 蝉の声はとても大きく成っているが、耳が麻痺したのか、そんなにうるさくは感じられない。南の残りの部分と北の半分くらいを回ったところで、休憩所に到着。


 ペットボトルのスポーツドリンクを買って、水分補給。ガブガブ飲んで一息をついていると、つぐみさんが戻ってきて、


『それって、甘め?』


『まあまあかな、はい』


って、ボトルを渡したらひとくち飲んでみている。


『そう、まあまあね』


と言って、残りも飲み干してしまった。間接キスに成るが、何故かあまりドキドキしない。逆だったらどうだろう、ドキドキするかな。

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