第23話 神島邸にて(リビング3)
第23話 神島邸にて(リビング3)
「ごほん」
これ見よがしの咳に、ふたりとも、ハッとなる。
「おはようございます」
「お父さん、おはよう」
少し気まずい、なんとも言えない間が空いてから、
「おはよう、俊哉くん、つぐみ」
つぐみさんのお父さんの声が、リビングに響いた。
「お父さん、こんなに呑んだのって初めてじゃない? もしかして、コレクション全部飲んじゃったりしてない」
「俊哉くんが付き合ってくれるから、ついつい空けてしまったかな。秘蔵のコレクションはまだあるから、それは次回という事で、俊哉くん」
「あっ、はい。その時はご相伴にあずからせて頂きます」
『次の宴かいな』
「ひとつ聞きたいが、君たちはどのまでの関係なんだね」
「どこまで、と言われましても……」
「さっきの見つめ合って、お互いに赤くなるなんて、今時の中学生の方がもっと進んでいると聞いているが」
「えーと、僕たちは」
「お父さん、私達はまだお互いを知るようになって日が浅いの。進んでいるいないとかじゃなくて、お互いをより知るように成る前に、お互いの家まで絡んできて、この関係性にも戸惑っている状況でもあるわ。
それでも、まだ何もしていない相手の親に会って、あーでもないこーでもないと探るようなことを聞かれても、ちゃんと対応してくれている俊哉さんの事が、私、好きです」
「お前達が好き合っているのは、見ていれば分かる。ただ、まどろっこしいんだ。俊哉くんの事は聞かせて貰った。俺の若い頃と同じ様な事をしていて、よく理解できるし、お前の言うような状況でもちゃんと向き合って話せる青年だ。私が心配しているのは、お前がちゃんと掴まえておかないと、他に盗られてしまうかもしれないっていう、危機意識がないことだ」
「危機意識?」
「そうだ、お前は俊哉くんが誰か他の相手に寝盗られたりしてもいいのか? ちゃんと身も心もしっかり押さえているって言えるか」
なんか、まだちゃんと付き合いを始める前に、浮気対策を目の前で論じ合っている様に見える。
「お互いが深い絆で結ばれているから平気よ」
って、何で俺の方を見ないで、ラルカを見ているんだ。
「そこが、危ういんだ!」
『絆も永遠ではないぞえ』
『『えっ!』』
『縁を持って結ばれはするが、それを育てていくのはお互いじゃ。育たなかった絆はやがて切れてしまうものだからのー』
「そんな、絆が切れてしまうなんて……」
「だから、おまえたちでちゃんとお互いを知り合った方が良いんだ、身も心も。外泊も許すから、ふたりで今日明日一緒に過ごしてみろ。
という事で、俊哉くん、つぐみを頼みますね。私は少し寝ますが、ここではなんだからつぐみの部屋で休んでいってください」
と言い残して、つぐみさんのお父さんは、リビングを後にした。
これって、お父さん公認でムフフな関係に成っても良いとお許しが出た事に成るが、果たしてそれが良いのだろうか? 普通、娘はやれんて感じで拒否的な姿勢になりそうなものだが……
「『俊哉さん、お父さんの言った意味分かる? 泊まりで旅行にでも行ってこい事かしら』」
いや、暗にその次のステップを示唆していたのだが、
「『いや、それ以上の事も言っていたと思うけれど、取り敢えず今日の過ごし方を考えよう』」
『で、殿と主はまぐわうのかえ?』
『え、ラルカちゃん、なんて事言うの』
『主の父ぎみは、そう申していたようだが違ったかのー、殿よ』
そういう風に作ろうとしていたムードをぶち壊すような発言は控えて欲しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます