第22話 神島邸にて(リビング2)

第22話 神島邸にて(リビング2)



『それで、そちたちのまぐわいはどうしたのかえ?』


 爽やかな朝の気分を台無しにするような、いやそんなことが有ったのだったら嬉しい……いやいやそんなことしてないし。


 やっぱり蝉だ。でも考えてみればラルカの趣旨は変わっていない、つがって結べ。まるでキューピットのような感じで、ふたりを繋いでしまっている。やっぱり、実はキューピットは蝉でした説も捨てかだい気がしてきた。


 ではなくて、この後どうするか、だ。つくみさんとは親しくなれた(まだ、一線は越えてないけど)。つぐみさんのお父さんとも親しく(たぶん)成れた。それに、お母さんとも。


 これで、つぐみさんと付き合うことについての障害は無い……筈だ。彼女の趣味の志向も多少分かったし、おれ自身の事もそれなりに知ってもらえたと思う。恋人と言える程は接近していないが、近いうちにそうなる気配は十分だ。


 色々と考えてしまったので、ラルカに返事をしていなかった。


『まだ、そんなこと出来ないよ。もう少し時間をかけてお互いをより知りたく成った時に』


 あれ? 俺ってつぐみさんと何処までの関係を望んでいたのだろう。毎日見かけていた、素敵な女性と話が出来て、実はお互いに興味を持っていて、その上お互いの親もそれを知っている。なんてシチュエーションが、1日で起きてしまうなんて、まるでお話のようだ。


 これって、親同士が知り合いの幼馴染のパターンに近いのでは? お互いを知っているが故になかなか一線を越えられない、みたいなもどかしさが満ち溢れていた話が多かったと思う。


 それには陥りたくない。ってことは、つぐみさんをこの手に抱き締めて、それからやることをやってより深い絆を作って、って、もう絆は出来ているし、それはとても深いものだ。子供を作るため? 快楽を求めるため? 自分自身の気持ちの置き場がよく分からない。


 そんなことをボーッと考えていたら、2階から人が降りてくる気配がした。見ると、つぐみさんが昨日のネグリジェに、ガウンを羽織ってリビングに入って来た。


『おはよう、つぐみさん』


『おはよう、俊哉さん。ふたりでこんなに呑んだの?』


『あまり覚えていないのだけれど、たぶん』


『きゃー、ラルカちゃん、おはよー』


『主もこの宴に出ておったのかえ』


『わたしは、お酒弱いから早々に退散、ってどうやって部屋まで行ったのかしら』


『え、覚えていないの? 部屋まで連れていったんだけど……』


『ありがとう、って、もしかして寝かせてくれたの?』


『ああ、不埒なことはしていないよ。それは、お父さんも保証してくれる』


『そーかなー、ラルカちゃんは俊哉さんに憑依しているのでしょう? だったら、何をしたかは見ていたわよね』


『うむ、最初から最後まで殿に付いておったからのー』


『それじゃ教えて、私の服を脱がしたのは?』


『殿じゃ』


『私にパジャマを着せたのは?』


『殿じゃ』


『他に何かしていなかった?』


『胸の部分を覆っておる服を脱がすのに難儀しておったくらいじゃ』


『胸の服ねー』


『あ、あの、寝苦しいと思って外してあげようとしたら、フ、フロントフックで、やり方が分からなかっただけだよ』


『でも、最終的には、外したんでしょ』


『ちゃんと、ネグリジェを着せながらだから、見ていないし、触ってもいないから』


『それって、そんなに私、魅力ない訳』


『そ、そうじゃ無くて、そりゃ見たいし触りたかったけれど、寝ているつぐみさんをでは無く、お互いを感じ合って愛し合うのが良いと思ったんだ』


 言っていて、赤くなってきたのが自分でも感じられる。それに、責めている訳では無いのだろうが、質問しているつぐみさんも真っ赤だ。ここで、つぐみさんがしなだれてきたら、自分を押さえられる自信はない。といった会話を頭の中でしながら、見つめ合っていたのだろう。お父さんが起きて、こちらを見ていた事には、全く気がつかなかった。

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