第15話 口?は災いの元
第15話 口?は災いの元
『君にちゃんと言えてなかった。つぐみさん、僕とお付き合いしていただけますか』
『えっ、なに急に言ってるの』
『本当はお母さんに言う前に君に言うべき事だったって気づいたんだ。どうですか』
『ええ…私も、俊哉さんとはお付き合いさせて貰いたいと思ってます。ただ、父が何て言うかが少し心配なだけ。母は応援してくれると思うけれど』
やっぱり、あの想像したパターンは有り得るのか。お父さんには、お手柔らかにして頂けることを期待したい。
『お父さんって、厳しい人なの?』
『普段は優しいけれど、私の事になったらどういう反応をするか、ちょっと判らないわ』
慎重に進めないといけない事案だ。まずは、お母さんに認めて貰うところから始めていくしかない。
『お母さんの感触はどんな感じかな』
『ここに来る途中、ずっとあなたの事を聞かれ続けたわ』
『絆と蝉の話しはしたの?』
『いえ、まだよ。少しはぐらかした感じでは話してあるけれど、ちゃんと話しても信じて貰えるかは別だから』
お袋は、同じように絆を経験しているから、特に説明は要らなかったけれど、つぐみさんのお母さんには、一からになるとそれなりに考えて話す必要が有りそうだ。
その辺りをどうしていこうか話していると、料理が運ばれ出してくる。ハーフのコースで前菜、スープ、メイン、デザートの流れだ。
つぐみさんの意見だと、お母さんは理解してくれると思うが、父親はまず無理だろうとのことで、そこを踏まえての戦略が必要だ。
気がつくと、つぐみさんのお母さんが席を外して外で電話をしているようだ。扉を開けて入って来たお母さんは、大きな溜め息をついてから席に座った。
お袋になにやら言ってるようだが、細かいところは聞こえてこない。ただ、聞き漏れてくる言葉には、”旦那が”、”来る”のような物が含まれていたように聞こえた。
『お父さんが、来るのかな?』
『そうね、あり得るわね。母がどう言ったかだけれど、家に帰って誰も居ないので電話してきて、ここにいることを知ったら来るかも』
別に内緒で悪いことをしているわけてはないので、堂々としていれば良いのだが、どうしても例のキーワードが頭から離れない。
『なんか、緊張してきた』
『平気よ、来て早々文句言ったりはしないと思うわ、お母様もいらっしゃることだし』
『そうだよね、なんか気にし過ぎてしまったかな。今日、娘さんを下さいって言う訳じゃ無いんだし』
『えっ!下さいっていうの。それって私たちの結婚を許してくださいじゃないの』
『こ、言葉のあやだよ。父親の定番は”娘はやれん”だから、それを考えたら出てきたんだ』
『でも、あなたって私を貰うって考え方なの?』
『家に来て貰う、とかじゃなくて、もー』
「『僕と結婚して一緒に暮らしてください。ってちゃんと言うよ』」
と声にも出してしまった。その反響は、肩に置かれた手の重みを感じたことで、別の意味を実感させられた。
「織田くんだったかな、”ちゃんと言う”、と言うところをじっくり聞かせてもらえるかな」
と、かけられた手の先を振り替えると、つぐみさんのお父さんと思われる男性が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます