第13話 恋人たち
俺としては、ラルカが絡んでのカップルがこれで二組出来たという感じで良いと思っているが、つぐみさんも同じ認識だと信じたい。
お袋との話も一段落したし、時間もかなりの経ってしまい、まだ明るいとは言え夜に成っている。そろそろ、つぐみさんを送って行かないといけないから、
『「つぐみさん、そろそろ家に連絡いれておいた方が、良いんじゃないかな」』
と、お袋にも聞こえるように声に出して話す。
『「そうね、ありがとう。お母様、ちょっと家に電話してきます」』
と言って、ベランダに出て携帯をかけている。
「俊哉、甲斐性ないと思っていたけど、良い娘さんと知り合えたわね」
「ああ、ラルカが居なかったらお互いに引かれ合っていた事には気付けなかったと思うし、俺が勇気を出せなかったかも知れないから」
「そうね、彼女はきっかけをくれたわ。でも、それを育て育むのはふたりだから、頑張りなさい」
「うん、ありがとう」
『俊哉さん、ちょっとまずい事に成ったの』
『え、つぐみさんどうしたの?』
『母がこちらにお邪魔するって言い張って、全然話をさせてくれないの』
「かあさん、つぐみさんのお母さんが家に来たいって。来てもらっても平気かな」
「あらあら、帰って来たばかりだから何のおもてなしも出来ないわね。それだったら、新しく近くに出来たレストランでお会いする事にしましょう」
つぐみさんに、その趣旨を絆通信で伝えて、つぐみさんのお母さんもオーケーなので、予約の電話を入れておく。住宅街に有るカジュアルなレストランなのでそんなに気張る必要はないのだが、つぐみさんは一旦帰って着替えて来るように言われたみたいだ。
「お母様、母が一旦帰ってから出直すようにと言いますので、すみませんがおいとまさせて頂きます」
「そんなに気を使わなくても良いのよ。俊哉、つぐみさんを送っていきなさい」
「ああ、分かってるよ」
「それでは、失礼します」
ふたりでエレベーターを降りながら、
『何でお母さんが来ることに成ったの?』
『それは、あなたの家にお邪魔している事と、お母様にお会いした事を言ったから、自分だけ仲間外れにされたく無かったんじゃない』
『仲が良いんだね』
『普通に母娘が話す程度だと思うけど』
『俺も君の家にお邪魔したって言ったら、お袋、私もって言うかな』
『家の母よりはしっかりされているようなので、後でその娘を家に呼びなさい、っておっしゃるんじゃない』
そうかな、つぐみさんのお母さんと同じ事をしそうなんだけど。などと、話しているとつぐみさんの家のそばのさっきの公園まで来ていた。
『ここでいいわ、また後で』
『じゃあ、また』
彼女が家の門を閉めて中に入るのを見届けてから、家に戻ることにする。戻りながら、今日の夕食はどんな意味を持つのだろうか、と考えてみる。
両家顔合わせ、何て言ったら結婚するみたいだ、出来ればしたいけど…
まあそうはならなくても、お付き合いさせていただくご挨拶という感じになるのが、妥当なところかな。
何て挨拶すればいいだろうか。
”初めまして、今日からつぐみさんとお付き合いさせて頂いています”
これは、ちょっと変な感じがする。
”今日、運命的な出会いをしました”
これも無い。道すがら色々と頭をよぎるが、良い挨拶が浮かば無いうちに家に着いてしまう。
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