第6話 「運命」と「う・ん・め・い」

 蝉の女王であるラルカが出てきてくれたが、事態の方はかえってこじれていっているようだ。


『あのー、俺と神島さんが結婚しないとこれは解除されないと言うことですか?』


『なんじゃ、結婚?つがいはつがいじゃ。オスとメスで力をあわせて子孫を作る。それだけじゃろ』


 駄目だ、蝉の論理にはついていけない。神島さんを見ると、何か考えているようだ。


『ラルカちゃん、良いかな。私たちと蝉とは生きている長さや、子供の作り方も違うの。あなた達のように、夏の間に相手を見つけて、情熱的に愛し合って、卵を産む。それはそれで素晴らしいわ』


『うむ』


『そこでは、こんな感じてお互い通じ合う魔法があればより親密になって事も早く進む、それがあなた達のつがい』


『よく理解しておるの、つがう為には相手を知らないと成らんからのー、これでおぬしらもお互いをよく知れるように成ったじゃろ』


『ラルカちゃん、あなた達の様に燃え上がるひと夏の愛だったらそれも良いけど、私たち人間はあなたたちと違ってもっと長く生きるし、子供は産みっぱなしではなく、育てないといけないの、そのつがいで』


『それじゃったら、なおさらお互いが繋がっていた方が良いんじゃないか』


『そうね、そういう相手同士だったら良いかもしれないけれど、私たちはそういう関係ではないの』


『わからんのー、求める相手がいて、求められて絆ができれは、それは天啓では無いのかえ』


『それって、あなた達は自然に繋がるんでしょうけれど、私は無理やり繋がれたのよ、それは天啓では無いわよね』


 少し、言葉がきつめになって来ている。


『まあ、ラルカも悪気があった訳じゃ無いんだし、誤解を解いていけば良いんじゃないか』


『先に言っておくが、お主らの絆が出来るのには関わってはおるが、絆自体を結んだのは我ではないぞ。そもそも、繋がらない相手には何をしても繋がらないものじゃからの』


 ラルカが無理やり繋げたのではない。と言うことは、う・ん・め・い!と考えても良いのか。


『緣(えにし)の無いものには、絶対起きん事じゃ』


 更に、その考えをラルカが後押ししてくれる。


『か、神島さん、これってう…』


 俺の言葉は最後まで続ける事が出来なかった。大粒の涙を浮かべている彼女を見てしまっては、言葉を飲むしかない。


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