8日目
「そろそろ真面目に勇者様を召喚してほしいのです」
「あー、それ言っちゃう? お前がそれ言っちゃう?」
散々勇者以外を召喚させてたのはお前だろうが!! ちょっと空腹が満たされた瞬間、手のひら返してきやがった。
「わたくしは、この世界を救うため、あなた様を召喚いたしました。神聖なるガチャは、世界を救うためにこそ回されるべきです」
おかしい。急にそれっぽいことを言い出した。こいつ、まさか偽物か?
「どうした? 変な物でも食べたか? だから拾い喰いはするなと──」
「拾い喰いなどいたしません! そもそも食物が落ちておりませんもの!! もし落ちていたらすぐにでも──」
リリアは「コホン」と一つ咳払いをする。あぁ、大丈夫だ。本物だ。今、"地"が少し見えた。
「とにかく! 世界を救う勇者様を召喚してくださいまし!!」
強引に話の軌道修正をされたが、確かにその通り。俺も早く世界を救って元の世界に帰りたい。
「ずいぶんと久しぶりに感じるな」
この世界に来てから、"世界を救う"という目的でガチャを回したことが無かったかもしれない。既に8日目だというのに……。
俺は気持ちを新たに、ガチャ装置へとコインを投入し、
ガチャ
ガチャ装置から排出されたカプセルが空中で展開し、そこから光があふれる。
その光の中から現れたのは、黄色いトラックスーツのような服にマント、そして目立つのは頭髪が一本も無い頭……。
「あ、あなた様は……」
「ん? 俺? 俺は趣味でヒーローを──」
「ワンパァァァァァァァン!!」
俺は送還ボタンにワンパンチを喰らわせた。光に消えていくヒーロー。
「あぁ、神々しい"頭"の方でしたのに……」
「もっと他のコメントしよ!? そこに触れないでさ!!」
別に俺の頭はそんなことにはなってないぞ!? 断じて!! ちょっと人口密度が低めになっているだけだ!!
そんな俺の叫びに応じたように、ガチャ装置から出てくるコイン。
「はぁぁ……、もう一回か……」
俺はしぶしぶガチャレバーを回した。
ガチャ
排出されたカプセルが割れ、光が放出される。
ところで、カプセル補給とかしてないけど、カプセル切れとかにならないのかね……。なってくれないかなぁ……。無理だろうなぁ。
俺が"カプセルの在庫"を考えながら現実逃避しているうちに、光の中からは金髪碧眼の少年が現れた。
「ん? ここは?」
見たところ10歳……、いや、8歳か9歳くらいだな。いいところのお坊ちゃんなのか、仕立ての良い服を着ている。
「す、すごいです、この子からとても強い力を感じます!」
リリアはこの少年から何かを感じ取ったらしい。え!? リリアそんな能力あったの!? いままで全然そんなこと言ってなかったのに……、アレ? なんかこの展開覚えがあるぞ?
「あれ、お兄さん昔見たことあるね」
「あ、もしかして!」
前の世界でもガチャで呼び出した、異世界転生者だ! あの時は赤子だったのに…… くわしくは"14日目"を参照してくれ。
「こんなに大きくなって~、あの時はこんなに小さかったのにぃ……」
「親戚のおじさんみたいで、年寄臭いですよ」
転生者君は辛辣でした。
「まだまだ、魔法スキルの成長は十分じゃないんだけど……、命の危険が無いっていうなら、いい経験になるかもしれないね……。わかった、やってみよう」
某G13型トラクターなスナイパーのようなな言い回しで、転生者君改め、ハルト・ヴァンダル君はモンスター退治を引き受けてくれた。
「スキルの成長が不十分ね……」
ハルト君が空を舞う。振り上げた手の先、巨大な火球が発生し、彼が手を振り下ろすと同時に地面へと落着する。大爆発と共にチリとなって消える多数のモンスター。その爆炎を突き破り、巨大な風の刃が次々とモンスターの大群を切り裂いていく。
ハルト君の猛攻に右往左往するモンスターたち。その足元の岩盤が隆起し、逃げ惑うモンスターたちを一網打尽に飲み込み、更地へと変えていく……。
戦闘の行われている地点から5km以上は離れているのに、地響きや爆音が響いてくる。
「勇者って怖い!」
【世界のモンスター率99.99999%→99.0%】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます