続・6日目
「まさかこんな内容で次回に続くとは……」
「俺から行くぜ!!」
袖なし男あらため、自称ガチャライバルの"克翼の黒騎士レイヴン"(笑)は、指にコインを挟み、その手で顔の半分を覆い隠した。
「わが呼びかけに応え、出でよ!!」
「え、そういうポーズとかセリフとか要る?」
レイヴン君は指をはじき、コインを飛ばす。宙を舞うコイン、そしてそのままガチャ装置に納ま……らない。
「……」
「……」
地面をコロコロと転がるコイン。
「出でよ!!」
あ、拾って入れなおした。
「サモォォォォン!!!」
足を大股で開き、ぴんと伸ばした右腕でレバーを回す。
「ぐっ」
レイヴン君が小さく苦悶の声を出す。絶対回しにくいだろソレ。
ガチャ
飛び出すカプセル、そこから溢れる光。光の中から現れたのは……、
漫画肉。
「え……。このガチャって"物"も出てくるの?」
過去にジュン君の亡骸を召喚したことはあったが、あれはいわゆる"イレギュラー"だろう。まさか完全に"物"を召喚できるとは……。"勇者"要素皆無じゃね?
「まぁ、ストーリーが進むにつれてネタ切れでだんだん設定がブレてくる、なんてのはよくある──」
「ハフッ、ハフッ」
俺が一人で納得している横で、リリアが漫画肉を抱え込み……、
「喰っとる!!」
俺から肉を遠ざけるように背を向け、一人抱え込んで喰らい続けるリリア。
「一人で喰い切るつもりか! そんだけあるんだから少しくらい──」
「キシャァァァァァッ!!!」
俺の言葉を遮り、奇声を発して俺を威嚇する。き、危険だ。下手に手を出したら噛みつかれそうだ。
リリアは片手で漫画肉を抱え、手と足を地につけた状態でまるで蜘蛛のように地を蹴り、あっという間に馬車の影に隠れた。
「ふー」
数秒後。何事も無かったようにリリアは戻ってきた。信じられねぇ。こいつ骨まで喰いやがった。すげぇよ、どんな顎だよ。何で"事後"みたいな雰囲気出してるんだよ。
「さぁ! お前の番だ!!」
「え?」
ああー、そういえばガチャバトルとかいうやつだっけ……。
「名乗りたければ勝手に名乗ればいいのに……」
別にガチャとか名乗りたくないというか、誰も俺の名前呼んでくれない……。アレ? おかしいね。なぜか視界が滲むよ?
ガチャ
「……、まんじゅう?」
ガチャの光から現れたのは、茶色い表面の焼き菓子っぽいまんじゅう……、らしき物体。それが10個ほど。
10個、10個かぁ……。何とも言えない数だな。
「はんっ」
レイヴン君は俺が出したまんじゅうを見て、鼻で笑っている。
「うぅ、これでは満腹には程遠いですわ……」
リリアはまさに予想通りの反応だ。
いや、別に"ガチャ"の名前には、まっっっっっっっっっっっっ…………たく未練は無い。が、勝負となると何だか負けるのもなぁ……。
俺はまんじゅうを一つ手に取り、とりあえず食べられそうな物なのか、匂いを嗅いでみて──
ぽとっ
「え?」
手に持ったはずのまんじゅうが下に落ちている。おかしい──
「なっ!」
ゆっくりと手を開く。俺の手の中には、依然としてまんじゅうがある。俺はちゃんとまんじゅうを持ちあげていた。未だに手に持っている……。では、落ちたまんじゅうは何だ?
「が、ガチャ様……」
リリアの声に、俺はまんじゅうの山を見る。
「ふ、増えましたわ……」
先ほどまでは10個ほどだったまんじゅう。それが20個ほどになっている。
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「え、なんか変な効果音鳴ってない!?」
と、とりあえず変な効果音はおいといて。
俺は手の中のまんじゅうを改めて見る。まんじゅうが"増えた"ために、手から落ちた。まんじゅうが、増える……?
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
「こ、このまんじゅうは!! そうなのか! そういうことなのかっ!!」
まずい! これは"栗まんじゅう"だ!!
「お、お前ら、いいから全員これを早く食べろ!! 急げ!!」
俺の背筋に寒いものが走る。
「お、お前一体何を──もがっ」
口を開いたレイヴン君のその口に、とりあえず栗まんじゅうを2個押し込む。
「しゃべる暇があるなら食べろ!! これを残すと世界が……、宇宙が滅びる!!」
俺も急いで二つほど口に押し込む。むぐっ、こ、これはきつい……。直後に更に倍に増える栗まんじゅう。
「あ、あふぁい(ヤバイ)!!」
その後、4人で必死に栗まんじゅうを食べ続けるも、数回の増殖を経て、最終的には約200個ほどの栗まんじゅうを完食した。
「もう一生栗まんじゅうは食べたくない……」
【世界のモンスター率99.99999%】
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