5日目

「……へんじがないただのしかばねのようだ」

 リリアは倒れ伏したまま、動かない。

「自分で言うなよ! 俺も空腹で死にそうな思いだけども!! 従者も何とか言え!」

「ヒヒーン」

「お前に聞いた俺が馬鹿だった、もとい馬だった」

 もうこいつらイヤ。


「しかし、何か食べ物は必要か……。こう、"食べ物を呼び出せる"みたいな都合のいい能力がある人でも来ないかな……」

 できれば有名じゃない人で。


 そんなことを願いつつ、俺はガチャのレバーを回す。



 ガチャ



「くそっ! またハズレの食い物アイテムかよぉぉぉ、ま、まだだ、まだカードの借入残高が……アレ?」

 その手に持つスマホの画面を苛立たしげに叩く男が、その画面を見て眉をしかめる。

「ガチャに課金……、くっ、なんだ、このシンパシーは!」

 俺もあんなことを昔していた気がする……、あ、今もか。

「おい! 電波入ってないじゃねぇか! どういうことだよ!!」

 っていうか凄いな、全く俺たちに気が付いてない。やっぱり歩きスマホは危険だよな。


「ク、クイ、クイモノ!」

 倒れたままだったリリアがムクリと起き上がる。そして、まるで操り人形のようにカクカクと立ち上がる。こ、怖い!

「クイ、モノ……」

 リリアはスマホ男ににじり寄り、スマホを持つ男の手を握る。

「な、お前、なん──、ん? なんだここ?」

 今更ながらに自分の状況に気が付いたらしい。だが、リリアはそんなことには構わないらしい。

「クイモノ、ヨコセ! クイ、モノ、」

 男が持つスマホの画面を、無理やり自分に向けるリリア。期待の眼差しで画面を覗き込み、そして瞳からは光が消え、深い失望と絶望が浮かぶ。

「ク……、ク……、クヱナWYYYIIIIIIIIIAAAAAA!!!」

 頭を掻き毟り、漆黒の髪を振り乱しながら慟哭するリリア。

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!」

 悲鳴を上げるスマホ男。


「やべ、送還!!」

 光と共に消えるスマホ男。後に残されたのは慟哭を挙げつづけるリリア。


「……、しかばねじゃなかったね!」

 俺も現実逃避した。




「もう食べれれば何でもいい。あと有名なのはNGな」

 本格的にリリアがヤバイ。俺も空腹がヤバイけど、リリアほどじゃない。もういっそ、著作権的に危険な奴でも、現れた瞬間に捕食すれば問題ないかもしれん……(錯乱)。



 ガチャ



「あららぁ、なんだか久しぶりねん♪」

「ちょっ! ここにきてオカマの呪いが再発かよ!!」

 ガチャの光から現れたのは自称「美魔女?」のエリィ。騎士→魔王→オカマ と、華麗なる転身をした彼である。


「あらあら、そんなに腹ペコなの? なら何か食べさせてあげなきゃね♪」

 おぉぉぉぉぉ……、オカマから後光が差して見える。あなたが神か……。


 エリィはオカマバーのママらしいのだが、料理の腕前は一流だった。ここには調味料すらないのに、モンスターをあんなにおいしい料理として調理するとは……。

 リリアは目の前の料理をひたすらに食べ続け、従者の奴は涙を流して食べていた。役目を終えエリィが消えていくときには、むせび泣きながらいなないていた。馬から離れろよ……。


「あれ? エリィが消えていくのに寂しさを感じてる? 俺ノンケだよ? おかしいよね?」

 ダメだ。極限状態で錯乱してるんだ。気をしっかり持つんだ俺!


【世界のモンスター率99.99999%】

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