16日目

 今更だけど、"エリィ"ってもしかして"魅惑の天使エリィ"だろうか。昨日のランスロットの様子は恋の悩みっぽかったけど、まさかランスロットって"そっち系"!?

 昨日のピンク頭(髪の毛と頭の中身のダブルミーニング)もそうだけど、ジュン君の回りには、"ジュン君を狙う女"か"ジュン君を狙う男"しかいないのか!? その男は敵との間で揺れ動いてて、その敵はオカマ!?

 もうジュン君の境遇に同情を禁じ得ない……。こりゃマジでこっちに呼び出して拘束してあげた方が彼のためなんじゃないかと思えてくるぞ……。


 思い悩む俺に、キラキラと期待のまなざしを向けてくるマリア。その手には首輪が……。

「と、とりあえず今日は普通にいくから!!」


 俺は1枚のコインをガチャ装置に投入し、ハンドルを回す。



 ガチャ



 魔法陣を覆うカーテンのようにたなびく光。その中に一人の人影が……。


「ぐふふ、エリィ、ちょっとぐらい良いではないか──」

 ありえないほど鼻の下をだらしなく伸ばしたランスロットが出現した。

「はい消えたーっ!!」

 直後再び光が溢れ、その姿は掻き消えた。


 全身に鳥肌が立った。未だに寒気がする。ふと見ればマリアも両手で体を抱えるようにしてガタガタと震えている。うん、わかる。ものすごくきもかった……。

 何が酷いって、実際には居ないのだが、奴の隣に「あん、だめよぉ、そんなとこさわっちゃ」って言ってる"魅惑の天使エリィ"が幻視出来てしまったことだろう……。


 奴め、ジュン君ではなくエリィを選んだのか!? いや、ジュン君がノンケならそのほうがよかったのか……? ジュン君の性癖がどうなのか分からないが、"彼に幸あれ"と願わずにはいられない。




 それはそうと、これはマズイ流れだな……。ここまで3日連続で異形と戦えていない。本格的に"指名ガチャ"の導入を考えるべきかもしれない……。


 俺はガチャ装置から排出されたスタミナコインを手に持つ。

 最悪、今日はこのままお預けにしておいても、異形率はまだ取り返しが付く段階だと思う……、たぶん。ならば、今日のコインを明日に持ち越して、明日"指名ガチャ"をするか……。


「このコインは明日に持ち越ししよう。明日指名ガチャでいく!」

 俺はスタミナコインを握りしめ、マリアに宣言する。

「はい!」

 マリアは首輪を両手で持ちながら、笑顔で返事する。


「こ、拘束については、本人に意思確認してからだからね!!」

「はーい、隙をみて取り付けてやるわ」

「心の声ダダ洩れだから!」


【世界の異形率97.0%】

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