14日目

 成長チート型の勇者は大器晩成だよね。1日1ガチャの当社では即戦力を求めています。来たれ即戦力! 気の置けない仲間たちのアットホームな職場です! 別途特別手当あり! なんと王女から直々に首輪を進呈!!


「もっとちゃんとした勇者こい!」

 俺はスタミナコインに願いを託す!



 ガチャ



 いつものように魔法陣が光、いつものように光から人影が現れる。


 動きやすそうな服装は青の濃淡でまとめられ、同じく青でゴーグル付きの帽子をかぶっている。手には剣と盾……。

「ああ! この方は破壊神を破壊したという──」

「ニ○ラムッ!!(2回目)」

 王子は光の中に消えていった。やばい、久しぶりのノリで、送還ボタン押すタイミングが遅れるところだった。最近こういうノリ減ってきたからって油断したらだめだな。油断大敵。



 ころりんっとガチャ装置からコインが排出される。俺はそのコインを手に取り、再度ガチャ装置に投入。



 ガチャ



 再び光に包まれる魔法陣。俺達はその光が晴れるのを固唾を飲んで見守る。もちろん送還ボタンに手を置くことも忘れない。


「……あれ?」

 光が晴れても人影が無い。ここに来て召喚失敗!? コインも返却されてこないぞ!? おい、管理者出ていこい!!


「あ、あれは……」

 マリアが魔法陣の中心部分を指さす。俺もつられて視線を向けると、そこには小さな布包みのような物があった。


「……」

 赤子だ。おくるみに包まれた赤子が居た。まだ首も座らないほどの赤子なのに、泣きもせずこちらをじっと観察している。なんだか不気味だ。


「す、すごいです、この子からとても強い力を感じます!」

 マリアは赤子から何かを感じ取ったらしい。え!? マリアそんな能力あったの!? いままで全然そんなこと言ってなかったのに!?

「ん? やけに冷静な赤子で、すごい力がある……」

 目の前の赤子より、マリアの能力に気が向きそうになってしまったが、彼女の言葉でふと気が付いた。

「あ、もしかして……、俺の言葉理解してます? してたら瞬き2回して」

 俺の言葉に応じるように、赤子はパチパチと2回瞬きをする。


「もしかして前世の記憶とかあったり?」

 パチパチ瞬き2回。


 あ、うん、転生者だわ、これ。たぶん勇者として転生して赤子からやり直してる系だね。きっと神様から転生ボーナスとかもらってるんだね、きっと。

「う、うらやましくなんて無いんだからねっ!!」

 ただの"ガチャ係"として呼ばれたことを僻んでなんてないんだからねっ!!


「とりあえず、そっちの世界でもがんばって……」

 瞬き2回を見送りつつ、俺は送還ボタンを押した。赤子は光に消えた。


【世界の異形率92.0%】

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