12日目
漆黒の魔王ゴア・エリックは、明らかに勇者タケモト・ジュンイチ君と戦っていた感じだった。エリックには申し訳ないけど、俺は断然ジュン君派だ。そんなジュン君派な俺の見立てでは、勝負はジュン君優勢だろう。こっちでの異形伐採作業効率はジュン君に軍配が上がるしね。
まぁ、魔王もオカマ状態だったらジュン君といい勝負だが……。
それはそうと、昨日もマリアは気が付いたら居なくなっていた。最近は"エリック"出現時には必ずいなくなるな……。今度そういう機会があったら、マリアを見失わないように気を付けてみよう。
「……やはり拘束を……、いや、でも……、アレはナイ……、だがしかし……」
当のマリアはやや虚ろな表情で何やらブツブツと呟いている。その手にはしっかりと"拘束の首輪"が握られている。
ここ2日、マリアが逃げ出すような奴が召喚され、なお且つそんな奴が結構な成果を残している。さしずめ、「あんなのでも拘束しておくべきだったか?」と嫌悪と後悔のハザマを行ったり来たりしてるんだろうさ。
さてさて、俺の手にはいつもどおりスタミナコイン。ガチャ装置にコインをセットし、ハンドルを回す。
ガチャ
もう何度見たか分からない光景だが、いつもと変わりなく魔法陣は光に包まれる。
「あん、だめよぉ、そんなとこさわっちゃ──、あら?」
そして出現するオカマ……。
「誰が何を触ろうとした!? てか、このガチャ、オカマ専用かよっ!!」
再び出現した"魅惑の天使エリィ"。その衝撃と絶望に、俺は送還ボタンに手を伸ばし──
「はっ!」
俺は振り返る。そこにマリアの姿はなかった。
「少しくらい迷えよっ!!」
ガチャる前に見せた苦悩は一体なんだったのか……。
「もぅ、4回も呼ぶなんて、よっぽどアタシに逢いたかったのね♪」
「いや、それはナイ」
クネクネと体をくねらせつつにじり寄ってくる"魅惑の天使"に、即答でお断りを入れておく。とりあえず寄られた分を後退しておこう。
「ん?」
今4回と言ったか? 確かに今回は4回目だ……。
閃光(笑) → オカマ(1回目) → 魔王 → オカマ(2回目:イマココ)
「オカマが最終ジョブなのかよっ!!」
どうして途中で魔王を挟んだ? 魔王を挟む意味はなんだ!?
「あぁ、魔王のことかしら。あれ副業よ、副業。本業はこっちよ♪」
気持ち悪い投げキッスが撃ち出されたため、回避し──、なっ! 追尾してくるだと!?
というか、オカマと魔王の二足の草鞋って、誰得……?
「もう、イケズねぇん。しょーがないわね、今日もお掃除、しちゃいましょっかっ♪」
ウインクから謎のハートマークが射出され、俺を追尾してくる! くっ! 逃げきれないっ!!
その日、「オホホホホホホッ!」という奇声と共に、何かの潰れる生々しい音が一日響き続けていた(2日ぶり2回目)。
そして、やっぱり魔王よりオカマ状態の方が強い……。
【世界の異形率88.0%】
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