6日目
「やはり準備は大事ですわね」
マリアは何やら仰々しい輪を手に持っている。サイズ的には犬の首輪より少し太いか……?
「これは"拘束の首輪"ですわ」
マリア曰く、"拘束の首輪"は神話級レアアイテムで、通常体力切れや1日の時間制限で送還されてしまう勇者を、なんと"送還させなくする"ことが出来てしまうらしい。ただ、1つしかないため、止めることが出来る勇者は1人のみ。ここぞという勇者に対して使用する必要がある。
「昨日の"閃光のエリック"様は、なかなか優良物件でしたわ。惜しいことをいたしました」
"優良物件"っていう表現が物騒すぎ。「この男は年収多いし、身長高いし、イケメンだから優良物件だわ」みたいなノリにしか聞こえない。怖い。
今後は、いつでも"拘束"できるように準備することにしたらしい。さいですか……。
俺は手の中で今日のコインをクルクルと回し……、そして地面に落とした。
「……」
「……、どうか、いたしまして……?」
俺は"地面にあった"コインを拾い上げ、ガチャ装置にセットする。ちょっとカッコつけてみようと思っただけなんだよ!! いいじゃんいいじゃん!
ガチャ
光のカーテンが晴れ、その向こうから逆立った金髪の男が現れる。紺の上下にやや厳つい肩当を両肩に着け、その背には身の丈を超える巨大なバスタードソード……。
「確か伝承に……、この方はソルジャー1st!! ク──」
「興味ないね」
例の本を高速で捲りながら捲し立てようとするマリアを遮り、俺はクールを気取って送還ボタンを押す。自称ソルジャー1stは光に消えた。
自称ソルジャー1stは勇者か? "ブレイバー"とか使うから勇者ってことでいいのかな? まあいいか、興味ないし。
マリアは残念そうに首輪を撫でる。やめてくれ、あんなの拘束するな。やるなら"オリジナル"の奴にしてくれ。
クーリングオフでガチャ装置からコインが排出されている。俺、これまで人生においてクーリングオフって一度もしたことがなかった。ここに来てまだ6日目なのに、もう一生分クーリングオフした気がする。
ガチャ
俺もマリアも身構える。光が晴れた瞬間に"アクション"が必要となる場合が多いため、召喚は気が抜けない。まぁ、俺とマリアで身構えてる理由が違うのだが……。俺は送還ボタンに手を、マリアは首輪を手に。
そして現れたのは一人の男。
「む? ここは?」
男は周囲を見回し、一言そう発した。男は鎧を纏い、腰に剣を帯びている。先日の"閃光のエリック"ほどのガタイではない。が、何か"強そう"な雰囲気を出している。
「えっと、すみません、俺は
俺はとりあえず自己紹介しつつ、相手の名前を聞いてみた。
「吾輩はランスロット。"光の刃"の異名を持つ凄腕剣士だ。」
あ、この人自分で"凄腕"とか言っちゃったよ……。ガチャ前は首輪を持って構えてたマリアも、今は素知らぬ顔だ。どうやらマリア的には"違う"らしい。
全く関わりたがらないマリアに変わり、俺が事情を説明。(なぜ俺が……)
自称凄腕剣士のランスロットは、「悪を撃つのは"光の剣士"の務め」とかなんとか言いながら華麗に飛び出していった。"光の刃"だったんじゃなかったのか……?
ランスロットは……、うん、まあ、結構強かった。
【世界の異形率95.0%】
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