5日目
「新たな"英雄"をお迎えする準備は整っておりますのに……」
マリアは今日も憂い顔でそんなことをのたまう。あのー、そういうフラグ立てるのやめてもらえますか。狙ってやってるのか? そうなのか?
「もう既に嫌な予感しかしない……」
俺の言葉に、マリアはきょとんとした顔を返す。くそっ、狙ってるのか? 実は腹黒いな……。
俺はコインをガチャ装置に投入し、ハンドルに手をかける。マリアの言ったことは気にしない。別のことを考えよう。別の別の……、そういえば実家の犬元気かな。もう15歳くらいだったかな……。結構な歳だし、たまには顔を見に……、行けないわ。ここに居たら行けないわ。
ガチャ
魔法陣を満たす光。その中から現れたのは一匹の白い犬。
「ん? なんだここは?」
犬は戸惑い気味に言った……、言った!?
「しゃ、しゃべりましたわ!!」
「お父さんっ!!」
俺は送還ボタンを押した。"お父さん"は光に消えていった。
「え、今の犬は、ガチャ様のお父様……?」
「違います殿下。いいんです殿下。気にしないで殿下」
マリアは「殿下はやめてくださいぃ」と言いつつポカポカと叩いてくる。あざとすぎてうざい。
俺が犬を思い浮かべたから"お父さん"が出てきたのか……。しかしなぜ"お父さん"?
「あ……」
英雄……、えいゆう……、えーゆー……
「ソ○トバ○クじゃねぇか!!」
結局、しっかり"英雄"にも引っ張られてた。
「もう、今日は終わりにしたい……」
「ダメです! まだ1回ガチャれますわ!」
もう僕疲れたよパト○ッシュ……。
はいはい、クーリングオフクーリングオフ。
俺は出てきたコインを再びガチャ装置に入れ、雑にハンドルを回した。もうあれこれ考えてもしゃーなし。なるようになぁれー。
ガチャ
魔法陣を満たす光、その中に何かが出現した気配。その何かは、光が晴れるより早く飛び出してきた。
「ふはははははっ!」
暑苦しい感じのオッサンだ。ガタイが良く、装飾された鎧を身に纏い、大きく武骨な剣を背負っている。
「我が名は閃光のエリック!! むむっ!? これは邪悪の気配! 我が成敗してくれようっ!!」
自称、"閃光のエリック"はそのまま外へ飛び出していった。
俺とマリアは、ポカーンとしたままエリックを見送った。
エリックはまあまあ強かった。
【世界の異形率96.5%】
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