3日目

「今日もタケモト君みたいな人が来てくれると、安心なんだけどなぁ」

 今日も手にはスタミナコイン。3日目ともなると新鮮さは無い。


「今日もよろしくお願いいたしますわ!」

 マリアは今日も気合十分だ。


 俺は送還ボタンに手を置きつつ、コインをガチャ装置に投入。慎重にハンドルを回す。



 ガチャ



 魔法陣が光を発し、何者かが召喚された気配がする。


 逆立つ黒髪、布製の「旅人の服」を纏い、剣と盾を持つ。

「ああ!! 伝説の勇者ロ──」

「ニフ○ムッ!!」

 勇者は光の中に消えていった。え? アンデッドじゃないって? こまかいこたぁいいんだよ。


「あぁぁぁ……、あのお方は連なる勇者たちの始祖とも言える方で──」

「知ってるよ! そして伝説になる人だろ!? だからヤバイんだって!」

 俺もハマった質なので、良く知っている。知りすぎている。リメイク版は"盗賊"が強い。


 そしてコロリと転がり出てくるコイン。うん、クーリングオフだよね。知ってた。


「はぁ~」

 やるしかないか……。


 再びコインを投入し、ガチャ装置のハンドルに手をかける。もちろん送還ボタンに手を置くのも忘れない。

 ゆっくりと、だがしっかりとハンドルを回していく。



 ガチャ



 あ、もうエフェクトの描写いいですかね……。


「……」

「……」

 マリアも俺も無言である。なぜならば、そこに居たのは白い直方体だったからだ。いや、俺は何となく見覚えがある。いや、すぐに分かった、分かったのだが、この場に出現する"もの"としてあまりにそぐわない。そのためにすぐにソレと気が付けなかった。


「この質感、これはまさか……、豆腐?」


「なんでやねーん」


「しゃべった!?」

 豆腐がしゃべった。そしてナイフを手に(?)外へ飛び出していった。



 あー、そういえば、なんか聞いたことあったわ。ナイフ一本でゾンビと戦う、サバイバーな豆腐……。



 ──もうあかーん


 遠くから豆腐の声が響いた。



 結論としては、豆腐はタケモト君より強かった。


【世界の異形率99.2%】

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