第3話秋の日のあなたと私

縁側に座り缶ビールをプシュっと開け

喉を潤す

疲れた体にはこれが一番だ。

「あら、お隣よろしいかしら?」


振り返ると缶ビールを持ちふふっと笑い隣に腰かける

「「お疲れ様。」」


カンっという乾いた音が響く。

酒が弱いのにこうして付き合ってくれるところが今でもとてもかわいいと思う


「あんまり無理して飲むなよ。」

「大丈夫よ。ノンアルコールだから。」


「なぁ俺と結婚して本当に良かったか?」

少し酔っぱらったのか普段思っていたことを口にする

家庭をかえりみず、ずっと仕事ばかりだった俺に彼女は一言も文句を言わず黙って付いてきてくれた。


「もちろんですよ。

あなたは家族のために一生懸命働いてくれて子供たちも立派に巣だっていきました

これ以上何も望むことはないわ。」


「…そうか。ありがとう。」

ふとしわくちゃになった俺の手に彼女の手が重なる。

お互い年をとったものだ。

だが、手をつないだだけで今でも初恋のように胸がときめいた。

きっと俺は何度もこうして彼女に恋をするのだろう。

ここは空気が澄んでいる。

都会とは全く違う爽やかな空気だ。

今日は中秋の名月。

空を見上げると真ん丸な美しい月が俺たちを優しく包み込んでいる。





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