初めてをたくさん奪った君。
ここです。
短編 初めてをたくさん奪った君。
今までろくに話さなかった隣の君。
おとなしい子だけれど、クラスでは結構人気のある女の子。そんな君に誘われた放課後。ろくに用事もない僕だから断るなんてしなかった。
どこに行くのか君に聞けば「特に決めてないよ」と笑う君。だからふたりでファッションビルに。君に似合う服を探して、ウインドウショッピングを楽しんだ。
何を着ても似合いそうなそんな君にこれが良いかもと伝えてみる。彼女はにこりと「ありがとう」ひとこと僕に言ってくれた。
そんな笑顔に似合う洋服を探しては頭の中でコーディネート。勝手に彼女を着せかえ人形。結構それが楽しくていくつもの君が出来上がる。
君は僕の服を選んでくれた。買うわけではないけれど、君の選んだその服を大切に心のなかに取っておくことにした。
次に、雑貨店で彼女はアクセサリーを見ていた。あるうさぎのアクセサリー。とても気に入ってるようでずっとそれを眺めていた。だから、僕は彼女の見ていないところでそれを買う。今日という記念とともに。そして、彼女に渡せたら良いなと思い。
女性と出かけるなんて、今までしたことのなかった僕。君は違うというかもしれないけれど、これは僕の初デート。心に残らないそんなことは無いわけで。
何も買わずに僕たちはバーガーショップでひと休憩。
ハンバーガーとコーヒーのセット。ふたり同じものを頼んで、席へと移る。
ふたり、たわいない話をした。普段はろくに話をしたことのないふたりで。それに違和感もあり、幸福感もあり、おまけに彼女の笑顔にも癒やされる僕はきっと彼女に惹かれてしまったそんな気がした。
バーガーショップをでればもう真っ暗で、放課後という短い時間の終わりを告げる。彼女は、「ありがとう、付き合ってくれて。また明日ね。」そう言い残し、僕が言葉を伝える時間さえ与えず、北へと走り去ってしまった。
翌日、君は今までどおり。
僕は彼女と全く会話すること無く、ただ時間が流れるだけの学校生活へと戻っていた。それでもと、放課後、彼女を屋上へと誘い出して。「1日で好きになっても変じゃないよね? 」と彼女へ告白したけれど、彼女の言葉は「NO」。彼女は屋上から去っていき、振られてしまった僕だけ残る。
翌日の学校で、隣の席には何もなく彼女が居たという証が全て消えて。ホームルームで先生が「○○さんは家庭の事情で転校しました」そんな事を言っていた。
彼女は僕のこと気に入ってくれていたのかな? 転校だから付き合えなかったのかな? それとも本当に何も思ってなかったのかな?
たった3日で彼女のおかげで。
初デートから初恋で、初失恋と初めての出来事があっという間に通り過ぎた。
それでも君が残してくれた初めてはきっと一生僕に残るよ。
しばらくして、一枚の封筒に入った君からの手紙が届く。そこには「キミが好きだった」その言葉が一行書いてあった。
今でも大事に取ってるよ。初ラブレター。
これも僕の初めてだったから。
僕の机にはうさぎのキーホルダー、君に渡せなかったけど思い出とともに飾ってあるよ。
時が経つ。
手紙に住所を書く君は、おっちょこちょいだったのだろう。君とのつながり見つけ出して、時間を掛けてもうひとつの初めて君に奪われにいったんだ。
初恋人ってやつを。
初めてをたくさん奪った君。 ここです。 @kokotangpu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます