あたし神様じゃないからさ

 あたし神様じゃないからさ。

 出来ることと出来ないことがあるし。

 やれることとやれないことがあるし。

 やりたいこととやりたくないことがあるし。

 やりたいけど出来ないことだってあるわけよ。


 神様って結局『無』だからさ。

 でもこの体は肉の塊だし。

 別に要らないけど感情だってそれなりにあるわけだし。

 いいこともいやなことも酸いも甘いもあれもこれも見聞きしてやってきたけど、上手く行かないことだって糞ほどあるし。

 触ったものは無くなっていくし。

 欲しいものは手に入らないし。

 欲しいって言ったのはあたしなのに全力で拒否なんてしちゃうのもあたしだし。

 ずっと矛盾のなかで生きている。


 生まれてこのかた楽に物事が進んだことなんてひとつもなくて、

「ああはなるまい」

と固く心に誓った彼女に時々似てくる自分に吐き気がする。

 助けてほしいは聞いてもらえなくて、

 助けてほしいは叶えてあげられなくて、

 助けてあげるはこの嘘つきに変わる。


 あたし神様じゃないからさ。

 出来ることと出来ないことがあるんだよ。

 

 ビルの隙間に挟まって、ガキが煙草吸っててさ。

 ああ今吸えるとこないもんね。

 ガキもガキで大変だねぇ。

 気怠そうなそのクソガキの表情に、せめて見つかりませんようにと静かに祈る。


 優しそうだね。

 親切そうだね。

 でも全然そんなことないね。


 そりゃそうだ。

 だってあんたにあたしはわからない。

 

 損か得かで選んでいる。

 偽善の仮面を幾重も重ねてにっこり笑う。

「あなたのことなんてどうでもいいですよ。」

 本当か嘘かはあなたが決めて。

 あたしは別にどちらでもいい。


 ヒトと同じところに価値を見いだせないの。

 別にそれでも構わない。

 あなたの宝物はあたしにはゴミ。


 だってあたし。

 神様じゃないし。










『とてもチンケな恋のはなし』ジュリア より

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