お母さんと息子

「おぎゃああああああああ」

「あらあらなあに、どうしたの?」

「げえっ!」

「あっ! ……げっぷ……」


「うああああああ」

「なあに? どうしたの」

「うえ、うえ、」

「はいはい、おむつ替えようね」


「うわああああああん!」

「なあにー、どうしたのー」

「うえええええええん!」

「どうして泣き止まないのー、困ったなあ」


「あー、あ」

「なあに、どうしたの」

「うー、あ!」

「おなかすいたかな、……あ! 動いてる!」

「うぎゃあああああああ!」

「あーあ、痛かったね」


「あーあ」

「なあに、どうしたの」

「うひゃあああ」

「痛いからやめてー」


「まあま」

「なあに」

「まあま」

「ふふふ、なあに」


「まーま」

「なあに」

「まんまんま」

「アンパンマンね」


「まま」

「なあに」

「おみじゅ」

「ちょっと待ってね」


「おたーたん」

「なあに」

「むし、あげゆ」

「う! ……っわあ……ありがとう……」


「おかーたん」

「なあに」

「できたあ」

「なにが……あっ! それはだめ!」


「おかーさん」

「なあに」

「ごあんおいしいねえ」

「ほんと?良かった」


「いや!」

「まだなにも言ってないでしょ」


「だあめぇなあのぉー!」

「早くおいで! 置いてっちゃうよ!」

「だぁぁぁめええぇぇぇ!」


「かってぇ」

「駄目」

「かってよお」

「駄ー目」

「うわああああああん」


「おかあさん」

「なあに」

「きらい!」

「えっ!?」


「おかあさんみてぇ」

「なあに」

「おえかきしたの」

「あら、上手だね、でもお手々がすごいことになってるよ」


「おかあさん」

「なあに」

「きょうね、おともだちとおにごっこしたの」

「楽しかった?」

「うん」


「おかあさん」

「なあに」

「いつもありがとう」

「あらやだ、ありがとう。貰っていいの?」


「お母さん」

「なあに」

「なんでもない」

「変な子ね」


「お母さん」

「なあに」

「代わりにやってよ」

「自分でやりなさい」


「お母さん」

「なあに」

「今日お弁当要らないよ」

「えっ嘘!?」



「お母さん」

「なあに」

「今日学校休むよ」

「具合が悪いの?」

「行きたくないから」


「お母さん」

「なあに」

「お菓子ないから買ってきてよ」

「お母さん要らないもん」


「お母さん」

「なあに」

「今日部活試合だから遅くなるよ」

「そういうのはもうちょっと早く言ってよ」


「お母さーん」

「なあに」

「歯みがき粉切れてる」

「新しいの出しなさい」


「お母さん」

「なあに」

「頑張ってくるよ」

「体に気を付けるのよ」




「お母さん」

「なあに」

「お金足りないんだ。父さんに内緒でちょっと送ってくれないかな」




「お母さん」

「なあに」

「卒業決まったよ。来月から社会人だから」

「おめでとう。しっかり頑張ってね」





「お母さん」

「なあに」

「結婚しようと思うんだ。今度、挨拶に帰るから、家の中掃除しといて」




「お母さん」

「なあに」

「実は来月、子どもが生まれるよ」

「は!? 来月!?」






「母さん」

「なあに」

「最近顔出してなくてごめんな、来月帰るよ」

「じゃあお嫁ちゃんに食べたいもの聞いといてね」






「母さん」

「なあに」

「ごめん、今年は何かと忙しくてさ、ちょっと帰れそうにないんだ」

「いいよ、こっちはこっちでのんびりしてるし、学校もあるだろうしね」






「母さん」

「ごめん母さん今入院中」

「は?! いつから?!」

「ええー、いつだったかな、ちょっと前からよ」

「帰るよ」

「いいよ、居たってすることないし邪魔なんだから」




「母さん」

「なあに」

「身体大丈夫なのか?こっちで一緒に暮らしても」

「嫌よ気を使うし。自分であれこれしたほうが楽だからね」






「母さん」

「母さん」

「親不孝でごめんな、」

「ありがとう」


「こちらこそ、ありがとう」

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