今日の雨はセクシーだから好き。

 彼女は中途半端に伸びた髪を後ろ手に纏めながら、ベランダに面した窓をのんびりと眺めた。

 僕は彼女のような意味不明な感覚は持ち合わせていないので、彼女の言っている意味を図りかねて、そうなんだ、と疑問を呈した。

 だって、なんだかキスをしているみたいな音がする。

 彼女はそう付け加えたけれども、やはり僕には理解できなかった。

 雨はばたばたと音を立てて降っている。

 空気中の汚いものを全て浄化して、辺りにくっきりとした輪郭をもたらそうとしている。

 僕は剥き出しのままの肩甲骨にじっとり貼り付こうとしている湿気が不快でならないが、機嫌を良くしている彼女の邪魔をするまいと黙っていた。

 彼女は降ってくる雨音にうっとりとしている。

 服を着込むのは早かった。

 白と青が混じったような色のシャツを着て、脚を抱えて座っている。

 ちぇ。

 さっきまでそんな顔しなかったくせに、僕は雨に負けるのか。

 降りかたが潔すぎて、かたつむりには似合わないわね。

 彼女はまたしても意味のよく分からないことを言った。

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