白いブラウスと赤い口紅の人

 薄いレースのカーテンが風に揺られて、緑色の朝日を浴びて彼女は目を覚ます。

 起き上がると、彼女の長い明るい髪が、彼女の綺麗な裸を隠してしまう。

 彼女はいつも、起きるとまず最初に、シーツに皺を作りながら、わざわざ僕を足蹴にする。

 僕は、蹴られたからゆっくりとベッドから這い出して、彼女のために玄関ポストまで新聞を取りに行ってやる。

 細くて長い指先に新聞を乗せると、彼女はまるでこどもにするかのように僕の髪をくしゃくしゃにする。

 僕はそれにすっかり気分を良くして、彼女が裸のままベッドで新聞を広げている間に、彼女の為に朝食を用意する。

 トーストと、レタスとトマトとヨーグルト。

 彼女は新聞をベッドに残したまま、テーブルに並べた皿の中からトマトだけ指で摘んで、口の中へ放る。

 その時微かに覗く舌先は、昨夜僕のものだった事を思い出すとまた気分が良くなって、立ったままパンツを穿く彼女にアイスコーヒーを用意してやったりもする。

 でも彼女は、それには口をつけないで歯磨きをしてしまう。

 白いブラウスを羽織るから、僕はその釦を留めるのを手伝ってやる。

 本当は外す方が好きだけど、前にやったら本気で殴られたから、朝はもうやらない。

 ふんわり揺れるスカートも履いて、長い明るい髪を、後ろで無造作に束ねる。

 僕は彼女の、そういう少しだけいい加減なところが、案外好きだったりする。

 化粧っ気のあまりない彼女は、唇に真っ赤な色だけ乗せてから、最後に僕がいれたアイスコーヒーに口をつける。

 彼女はそうして、透明なグラスと僕の唇の周りにその紅を移してから、良い子にしてるのよ、と、部屋の扉を開けて出て行ってしまう。

 そんな彼女を、僕は晩御飯の支度を考えたり新聞を拾い上げたりしながら、遅い帰りを待つのだ。

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